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2015-02-07

ミャンマー(ビルマ)写生旅行 その8

 (「ミャンマー(ビルマ)写生旅行」その7からの続き)
 2014年10月23日、ミャンマー写生旅行の22日目です。今日も早朝から、シュエズィーゴォン・パヤーで巨大仏塔を1時間余りスケッチしてから、宿に戻って朝食をかき込みます。

 朝食後、シュエズィーゴォン・パヤーの近くの、ナッ・トゥ僧院の約500年前に描かれたというフレスコ画を鑑賞。当時の生活・・・楽器を弾く人、踊る人、馬車に乗る人、動物達などが生き生きと表現されています。この時代の壁画は実にのびのびと描かれているので見ていて楽しくなります。次に近くの、チャンスィッター窟院を見物。暗い中にいくつかのフレスコ画が残されています。
 自転車(レンタル自転車、一日1000K)でオールドバガンに向かい、アーナンダ寺院の近くにある、アーナンダ・オーチャウンという小さい僧院を見物。12世紀創建の建物内部に、18世紀の優れた壁画が残されています。バガンで最も有名な巨大寺院、アーナンダ寺院も、もう一度見学し直して目に焼き付けます。
 次に向かおうと自転車に乗ると、またもや空気が抜けています。「おいおい、ええかげんにせえよ・・・」と思いながらも、長い道のりを宿まで戻りました。レンタルサイクル店を変えれば良いのではないかと思われるでしょうが、多分どことも同じ様なものであろうという考えと、レンタル店のイーデン・モーテル2のおじさんは比較的愛想が良いので、それに答えてあげようという私なりの思いやりなのです。その日は替えの自転車もなく、「パンク修理に1時間待ってくれ」と言います。仕方がないので、ニャウンウーマーケットをぶらぶら見物しました。市場は朝に活気付くので、昼の今は静かです。私の絵画教室の皆さんや知人・友人へのお土産を買わなければいけなかったので、丁度良い時間が取れました。寺院の土産物屋で買うより、マーケットの方が少しは安いかも知れません。竹で工作した手作りキーホルダーが面白いので、60個買いました。一つの店では数が足りなくて、他の店の物もかき集めて、やっと60個になりました。多く買った分、少しまけてもらいました。
 ようやく自転車の修理も終わり、再びオールドバガンにくり出します。えらい時間のロスですが、アジアの旅はこんなものです。のんびりと行きましょう~。

 前にも見物したヒンドゥー教僧院のナッラウン僧院が面白かったので、そこで1時間余りスケッチしました。インドのエローラ石窟でも見られた、「ヴィシュヌ神のへそから蓮が伸びて小さなブラフマー神が宿る」という有名なテーマのレリーフです。ただ、インドのものはブラフマー神のみですが、ここのものはブラフマー神とシバ神とヴィシュヌ神の三神が現われています(多分、この三神でしょう)。ヴィシュヌ神は2人いる事になり、奇妙です。
 その後、前にも書きました、象と不思議な獅子?の彫像がある、2925番寺院の外観を2時間近くかけてスケッチしました。すると、近くで遊んでいた子供達と、警備中の警察の若者が集まって来て、絵を見てワイワイ言っています。子供達はワンパクで元気一杯です。ここの観光警察も大抵人が良くて親切です。

ミャンマー旅行45ナッラウン僧院 「ヴィシュヌ神のへそから蓮が伸びて三神が宿る」

 こうして夕方になり、ニャウンウー村に戻りました。明日はバガンからヤンゴンに向かうので、バガンでの最後の夕食です。日本人が経営する「富士」という食堂があるので行ってみました。親子丼(3500K)には味噌汁・お新香も付いて、日本の味そのままで本格的です。オーナーに話しかけると、静かな物腰の方でしたが、随分前にミャンマーに移り住んで長く食堂を営んでいるそうです。

                  *

 ミャンマー写生旅行23日目。バガン遺跡巡りも今日で6日目です。夕方にヤンゴンに向かうので、それまで取材をします。早朝、シュエズィーゴォン・パヤーを1時間余りスケッチし、6日間・約7時間かけて、ようやくスケッチが完成しました。私が、これ程時間をかけて一枚のスケッチを仕上げるのは珍しい事ですが、おかげでかなり詳細なスケッチが描けました。横で絵を熱心に見ていたミャンマーの青年がいましたので、彼を10分位スケッチさせてもらいました。建物などを描いている時に最後まで熱心に見てくれる人は「絵」に対する関心が高いはずですので、すかさずモデルを頼むというのも、私が他人を描くテクニックの一つです。
 朝食の後、オールドバガンに向かう途中で、KHAY・MIN・GHAという名のガイドブック(地球の歩き方)にも載っていない寺院に寄りました。この周辺には小さい寺院群があり、いくつかの内部にはフレスコ画が残されています。
 そこから道を挟んだ向こう側にも大きな寺院がいくつか見えるので、所々立ち寄りながら進みました。すると、道の掃除をしているおじさんが、「Beautiful.」と言いながら先の方を指さしています。何か美しい物があるという事らしいので半信半疑行ってみました。何やら庭園らしきものが現われ、美しい南国の花や熱帯睡蓮が咲いています。「確かに美しい・・・」と思いながら、周囲の遺跡群とは異質なこの空間は何だろうとガイドブックを見ると、バガン国際上座部仏教リサーチセンターという施設の様です。そこにいた、先程とは別のおじさんが「建物の中を見るか。」と言いますので、建物を開けてもらうと立派な内装です。申し込めば、ここで瞑想体験などもできるそうですが、今回の様に見物だけでもさせてもらえる様です。裏庭からはエーヤワディー川が望めました。この庭園は観光客もいなくて静寂で、入場は自由の様なので、休憩するにはとても良い穴場です。

ミャンマー旅行46バガン国際上座部仏教リサーチセンターにて 「南国の花」

ミャンマー旅行47遺跡周辺では牛やヤギの放牧が見られます

 オールドバガン地域に入る手前の白い仏塔に寄ると、女性が寄って来てお供え用の花(もちろん有料です)はいらないかと勧めて来ます。私がやんわり「いらない」と断ると、無理やり首に花輪をかけて来ます。数日前から、バガンのあまりの”観光化”の進み具合に少々辟易していた私は、さすがにこの時、今までのフラストレーションが表面化して、「NO!」と強めに言いました。その時、手を払った勢いで花が地面に落ちてしまいました・・・。バガンでは、日本人はたまにしか見かけませんが、欧米人の観光客はかなり多く、観光化・通俗化も予想以上に進行していました。確かに遺跡群は「世界三大仏跡」と言われる通り極めて素晴らしいものですが、あまりに過度な”観光化”が進むと興ざめしてしまいます。現地の人々は決して裕福とは言えない生活をしている人がほとんどで、出店などは大切な現金収入源であるでしょうし、観光客の私達がとやかく言う権利はないのでしょう。しかし、より良い遺跡保存と観光開発のバランスを考慮すると、将来的には遺跡中心部での物売りの制限などの考察が必要になって来るのではないかと思いました。いつも旅先では、この類の二律背反に考えさせられるのです・・・。
 オールドバガン地域の、ガー・チャウェ・ナダウン・パヤーと言う小さな仏塔を1時間ばかりスケッチ。最後に、シュエサンドー・パヤーにもう一度上って、バガンの遺跡群を目に焼き付け、アーナンダ寺院で旅の無事と、良い絵が描ける様にと、世界平和を祈願して、時間に余裕を持って宿に戻りました。

 こうして無事に宿に着くかと思いきや、またもや最大の自転車トラブルが・・・。少し前からチェーンの具合がおかしかったのですが、とうとう完全にチェーンが外れてしまったのです。私はチェーン装着には慣れているのですが、どうやら噛み合わせ自体に不具合がある様で、付けてもすぐ外れてしまいます。チェーンを付け直したり、足でこいだり、歩いたり、十何回も繰り返して、通常ならオールドバガンから1時間弱でニャウンウー村に戻る所が、2時間近くかかりました。時間に余裕を見ていたので問題なかったのですが、結構疲れました。(*_*) お供え用の花を強く断ったのがいけなかったのかな・・・・。

 ようやく宿に着くと、前日に予約しておいた空港までのタクシーの待ち合わせ時間丁度でした。ところが、エアーバガンから宿に連絡があったという事で、飛行機の出発時刻が1時間ばかり遅れているらしいです。しかし、念には念を入れてタクシーの時間を30分だけ遅らせて、時間にゆとりを持たせました。
 部屋の荷物をまとめると、さてチップはどうしようかと考えました。イーデン・モーテル3は部屋はきれいで設備も良く(テレビ・トイレ・シャワー付き)、朝食も美味しいのですが、オーナらしき男性は時折愛想笑いを見せますが、その他の若い男性スタッフが素っ気ない感じで態度が良くないのです。今後の若者の成長の為に他より少額に抑えて、「笑顔がないので減らしたぞ・・・」などのメッセージ文を残そうかと思いましたが、あまりに嫌味に取られそうなので、いっその事チップはなしにしました。代わりに、7日分の飲み物の空きペットボトル30本近くを、部屋の隅に大きい順にきれいに並べて置き土産としました。
 ホテルのチェックアウトをして、6泊分90ドルを支払いました。タクシーが来るまでに、ロビーでオーナーとスタッフの若者に、「一週間、毎日こんなハードな仕事をしていたのだ。」と、スケッチブックを見せてやりました。それを見た若者は少し驚いた様子で、少しはにかんだ様な笑顔を見せてくれました。バカンスで次々にやって来る先進国の金持ち達に少々ウンザリしているだけで、根は勤勉な良い若者達なのでしょう。

 夕方4時30分、タクシーで・・・といっても、バガンにはきちんとしたタクシーはない様で、ただの軽トラックでしたが、バガン・ニャウンウー空港に向かいました(料金5000K)。空港は村から近いので、20分弱で着きました。
 17時15分チェックイン。夕食は買っておいたパンを空港ロビーで食べました。18時30分バガン発→19時40分ヤンゴン着、エアーバガンW9129便。予定より30分遅れでヤンゴン国際空港に到着しました。
 空港からはタクシーで夜間割増料金10ドルにて、前にも泊まったチャンミー・ゲストハウスに戻って来ました。ホテルはビルの上階にあり、部屋は狭いですが清潔でテレビ付きです(1チャンネルしか映りません)。トイレ・シャワーは共同ですが、きれいに掃除されています。3泊分54ドルは前払いです。この都会ヤンゴンで、この設備でこの値段は珍しいらしく、いつもバックパッカーやビジネスマンでいっぱいの人気の宿です。日本人客も多く、日本語情報ノートがロビーに置いてあり、私も何だかんだ書き込んでおきました。

 ミャンマー取材旅行もあとわずか。明日からヤンゴンの街をもう一歩きです。この様子は、また次回といたしましょう。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁
 
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テーマ : 旅と絵
ジャンル : 学問・文化・芸術

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 後藤仁先生。お疲れさまでございます。
 手ごたえを感じる1日が伝わってまいりました(^◇^)
 しかし、それを阻むチェーン(油切れ?)、タイヤ(ムシゴム?)、花売り人。一筋縄ではいかないのが、神様の戯れ?そんな遊びを架せられての人生なのでしょうか・

コメントありがとうございます

さとおーる様。まさにはハプニングの連続ですし、また人生もしかり。「芸に遊ぶ」という言葉がありますが、良い事悪い事を含めて全てを楽しみ表現できたら、本物の絵描きなのでしょうな。 日本画家・絵本画家 後藤 仁

後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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