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2013-03-30

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』出版までの永き道のり その2

   「その1」からの続きになります・・・

 私は、「ぜひ、描きたいです。」と福音館書店の編集者に答え、いよいよ絵本制作が進みだしました。
 「どんな話を描きたいですか?」と編集者が言われますので、永年『アジアの美人画』をテーマに日本画を描いてきた私は、「アジアの民話を描きたいので、探してみます。」と答えました。初絵本として自分が描く話は、自分で見付け出したかったのです。

 昔から民話や物語が好きで多くの作品を読んできたのですが、あらためて「絵本」にむいた民話を選ぶとなると難しいものでした。
 話を選ぶに当たって2点を重要視しました。1つは、日本画家・美人画家の私が描くのにふさわしく、画力を存分に発揮できる話である事。もう1つは、現代の子供達にとって大切なものを伝えてくれる話である事です。
 私は、松戸市立図書館、千葉県立西部図書館、葛飾区立図書館の3館を10何回も往復して、図書館にある全ての「アジアの民話」を読み直しました。そこで気づいたのは、東南アジアの民話集は極めて少ないという事です。今後、この地域の民話集・物語集が数多く研究・出版される事を望んでいます。
   
 アジアの民話でも「中国の民話」が断然多く訳されており充実していますので、必然的に良い話も多く見付かりました。
 2か月位図書館に通い詰めるうちに、多くある話の中で中国民話『長い髪の娘』の物語が目に留まりました。「この美しい長い髪をぜひ描いてみたい、きっと良い絵本になるはずだ。」と直感しました!
 『長い髪の娘』の翻訳本をいくつか探し出し、福音館書店編集者に打診しましたところ、「それは良い話だ。」という事になりました。
 しかし、どなたに再話をお願いしようかとなった時、編集者は、「やはり中国の民話の再話となると、あの方しかいない。」となり、君島久子先生にご依頼する事に決定しました。

 まずは、作画の資料集めです。『長い髪の娘』の舞台である、中国貴州省と広西チワン族自治区に住むトン族の事や、話に登場するブタなどの資料を図書館などで集めました。また、何10回となく図書館に通い詰め、多くの専門書などを収集しました。この資料集めだけでも、2~3か月はかかりました。
 しかし、今までの作品制作の上で"現地取材"にこだわってきた私は、「どうしても現地に行く必要がある。」と採算などは度外視で考えました。トン族の村のある地域を調べてみると中国内でもかなりの奥地で、いつもの自由旅行の一人旅では簡単には旅行できなさそうな事が分かりました。私は中国の現地旅行会社と直接連絡を取り、通常の観光旅行では行けないような奥地の村まで取材するオリジナルコースを個人手配しました。

 2008年4月、いよいよ取材旅行の日が来ました・・・


  この続きは、また次回としましょう。  GOTO JIN

 (次回の絵本制作エピソードのカテゴリは、「ながいかみのむすめチャンファメイ 制作」ではなく、「写生旅行(海外)」になります。) 
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テーマ : 絵本・制作・イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

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はじめまして。
3年間通った娘の幼稚園から、最後に、『ながいかみのむすめチャンファメイ』をいただきました。
娘は幼稚園で先生に読んでもらった後も、感動が止まず、うちに帰ってから何度も何度も読みたがりました。
私は最初は絵を見て怖いお話かと思ったのですが、話を読み進めていくうちに、心優しい娘の葛藤に一緒に心を痛め、山の神への恐怖でハラハラし、そして最後、心が洗われる結末に安堵いたしました。うちの娘はストーリーもそうですが、絵の丁寧な描写がとても惹かれているようです。

私も娘も、お気に入りのこの絵本のことを調べてみましたら、こんなにも心を込めて描かれた作品だと知り、より嬉しく思いました。
また、最高の作品を作ってくださる事を期待しております。ありがとうございました。

「絵本」の御礼

さら様
「絵本」を見ていただきまして誠に有難うございます。お子様も楽しんでいただけたようで、うれしい限りです。
 今回、私は出来る限り本格的な「絵本」を目指して描きました。イギリスのアーサー・ラッカムの様な、絵画的にも高いレベルの「絵本」を、日本の子供達に届けたいと私は思ってきました。
 しかし、もしかしたら日本の子供にとっては、渋すぎるのではないか?難しすぎるのではないか?という懸念もありました。現在の日本では、軽いタッチのキャラクター的な「絵本」が多いですから・・・。
 
 純粋に子供達が、この「絵本」を気に入ってくれているという事は、作家にとってはとても有難く、勇気付けられる事です。次回作の『犬になった王子』(岩波書店)は大作絵本となります。今後ともよろしくお願い申し上げます。  後藤 仁
後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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