2014-12-09
ミャンマー(ビルマ)写生旅行 その6
2014年10月20日、ミャンマー旅行19日目。バガンの遺跡巡りのつづきです。朝6時から日課となったシュエズィーゴォン・パヤーでの写生を1時間余りしてから、ホテルで朝食をいただきます。イーデン・モーテル3のオーナーらしき男性はそれなりに愛想が良いのですが、スタッフの若者達は素っ気ない感じです。多分、毎日の外国人観光客相手にあきあきしている様子です。レンタルサイクルのあるイーデン・モーテル2のオーナーは笑顔を見せてくれます。
朝食後、オールドバガンに向かう途中、ガイドブック(地球の歩き方)にも載っていないシュエレイトゥー寺院に寄りました。この寺院は屋上に出れるので、周囲の寺院を見渡せて爽快です。内部にはとても優れたフレスコ画(壁画)が残っています。天井を見上げるとたくさんの円形文様があって面白いのですが、所々にコウモリの巣もありました。たいていの寺院内部にはコウモリやネズミが住んでいて、地面にはそれらの糞や尿がたくさん散らばっており、境内では裸足にならないといけないので、足の裏はいつも糞尿だらけです。宿に帰ってからも服に臭いがしみついており、これには難儀しました。また、寺院内でダニやノミが付いて来るので、ホテルのベッドにリュックサックを置いておいたら、今まで見た事も無い5㎜余りの大きなダニがシーツの上にいました。最初は、真っ黒なまん丸い物体が動いているので何か分からなかったのですが、つぶしてみると柔らかくて血が付いていたので、ダニだと分かりました。 (;´Д`) 東南アジアはマラリア、デング熱の危険性もあり、虫対策は不可欠です。
次に巨大なティーローミィンロー寺院に寄ります。内部には象を描いたフレスコ画などがありました。道をはさんだ向かいに小さな寺院ウパリ・テェンがあり、17~18世紀のフレスコ画がよく残っています。内部には入れず外からのぞくだけですが、幾何学文様・宝相華文様や僧侶の居並ぶ様子を描いた壁画は秀逸です。
ウパリ・テェンの先に2925番の番号が付いた小さな寺院がありました。タイ王国やインドなどでは寺院の装飾に象の彫像が多用されているのですが、ミャンマーではほとんど見かけません。珍しい事に、この小寺院の外壁には象の彫像が鎮座しています。さらに、建物の角にはウサギの様な面白い獅子?が立っており、思わず微笑んでしまう事請け合いです。



オールドバガン地域に到着し、高さ55mとバガンで2番目に高いというゴドーパリィン寺院を見物し、次にマハーボディー・パヤーに到着。インドのブッダ・ガヤーのマハーボディー寺院(大菩提寺)を模しており、私はインドのマハーボディー寺院もかつて取材したのですが、それよりかなり小さいながら雰囲気はそっくりです。ここで2時間ばかり外観のスケッチをしました。
次に漆器博物館(入場無料)に立ち寄りました。学芸員のAung Kyaw Soe Ltc 氏の解説を受け、ミャンマー漆器の制作工程がよく分かりました。ここでは漆芸職人の育成を行っており、その作品が展示販売されていますので、私も土産の漆器を買いました。黒と金色の5㎝程の漆器の小物入れが一つ3000Kですので、凝った手仕事の品と考えれば日本人からするととても安い価格です。
その後、エーヤワディー川のほとりのブー・パヤーから広大な川の光景を眺めました。何隻もの船が停泊しています。
自転車で少し走って、シュエサンドー・パヤーに到着。ここは5層のテラスからなる、きれいな四角すい形をした巨大寺院で、この上層からの眺めは格別です。ここからダマヤンヂー寺院・エーヤワディー川方面を1時間余りかけてスケッチしました。となりの小寺院、ローカテェイッパン寺院には撮影不可ですが、優れたフレスコ画が残っています。
シュエサンドー・パヤーから眺める夕日は最高と言いますが、早朝から活動している私は、この頃にはもうフラフラの状態ですので、夕日の沈む前に宿に引き返しました。夕食は、ア・リトル・ビット・オブ・バガンでインドカレーセット(約6000K)を食べました。とても豪華で美味しい。 ( ^^) _U~~


旅行20日目。この日も早朝からシュエズィーゴォン・パヤーでお勤めをはたし、朝食後、オールドバガン郊外のダマヤンヂー寺院に向かいました。この寺院の外観は巨大で威圧的ですが、内部にはほとんど何も無く閑散としていて少々不気味です。夜になると幽霊が出るとのうわさがあるそうです。コウモリがたくさん飛んでいました。
次にスラマニ寺院に移動しました。ここには11世紀のフレスコ画がよく残されており、仏画だけでは無く、昔の民衆の生活風俗が多く描かれており、大変興味深いものです。壁画の一部を模写していると、欧米の観光客に「Student?」と聞かれたので、「Painter.」と答えました。

前日の漆器博物館の学芸員から、ミン・ナン・トゥ村の近くのPhyar Thyine Su 寺院の壁画が素晴らしいと聞いていたので、スラマニ寺院からミン・ナン・トゥ村方面に向かいました。2㎞近く砂の道を走ります。自転車のタイヤが砂に取られて、なかなか進みません。途中で電動自転車に乗った欧米人に出会い、「あっちの寺はNo.1だ。」という様な事を言っているので、道をそれて寄ってみました。どの寺を指しているのかよく分からなかったのですが、Pyaut Thut Gyi という看板がある寺院の屋上からの眺めは良かったですが、特に優れた遺物はありませんでした。

道の途中途中、きれいな蝶々などを観察しながら、ミン・ナン・トゥ村に着きました。この村は織物で有名な村らしく、手作りのロンジー(腰巻)なども売っています。村に着くと早々におばさんが寄って来て、案内を始めました。通常なら勝手にガイドさんは遠慮していただくのですが、(アジア圏の観光地では、頼んでもいないのに勝手にガイドを始めて、最後に高いガイド料を請求される事が時たまあります。)直感で面白そうだなと判断して、ガイドを任せました。20分位かけて、機織り・糸紡ぎの様子を実演してくれたり、家畜の飼料を切る為の珍しい古道具の実演をしてくれたり、民家の中を見れたりと結構為になったので、最後にお約束の「Money.」に応じて2000Kばかりのチップを渡しました。民家に赤ちゃんの揺りかごがぶら下がっていて面白いので、直射日光の酷暑の中、30分余りかけて民家をスケッチしました。ミャンマーの伝統的な民家の柱は木製で、壁は竹を編んで作っています。屋根は葉か木片で葺いています。
ミン・ナン・トゥ村からPhyar Thyine Su 寺院に向かおうとした時、自転車のタイヤを見ると、空気が少し減っています。不吉なものを感じた私は、すぐさま宿に戻る事にしました。砂道を引き返すと、案の定、タイヤの空気は抜ける一方です。途中で昼食のパンとバナナをかじり、また自転車に乗った頃には、完全に空気が抜けていました。そこから5㎞ばかり砂道と舗装道路を通り、重いパンク車をこぎながら宿に帰りました。ついでに途中のエアーバガンのバガン支店に寄って、念の為に航空券のリコンファームを済ませました。
レンタルサイクル店で自転車を交換してもらい、再びPhyar Thyine Su 寺院を目指します。えらい大回りです。今度は空港へ続く大通りからミン・ナン・トゥ村へ続く別ルートで向かいました。地図によると、こちらなら舗装道路が村まで続いているはずです。乗り心地の悪い自転車をこぎながら4㎞余り進むと、バガン・ビューイング・タワーが見えて来ました。高さ約60mの展望タワーでバガンが一望できるという事ですが、客は少ないらしいです。タワーには寄らず、近くの小さな寺院に寄ってみました。Winidoという看板がありました。入口が閉まっているので金網越しにのぞいていると、管理人らしき老人が寄って来ました。入口が閉まっている小寺院近くには、どこかに管理人がいて、観光客が来ると開けてくれる事があります。そしてチップを渡すのが慣例です。
ここはとても小さい寺院ながら、とても優れた仏画が描かれてあり感動しました。この辺りの寺院は観光中心地から離れているので、詳細なガイドブック(地球の歩き方)にも全く記載されていませんが、どうやら優れた壁画が残されている地域の様です。寺院を出た時に老人にチップを渡そうとしたら、「いらない。」と言います。「私達が誇りとして守っている寺院を見てもらえるだけでいい・・・」という感じです。アジア各国ではチップを渡すのが当然になっている私は最初耳を疑い、次に有難さが湧いて来ました。私は老人にスケッチブックを見てもらい、ミャンマーのスケッチ旅行をしている旨を拙い英語で伝えました。老人はとても嬉しそうでした。その寺院を後にして自転車をこぎながら、心地よい郷愁感とともに、この様な時に旅先で往々経験する既視感(デジャビュー)を感じていました。あの老人こそ本物の「寺守」だなと回想しつつ・・・。
程なくPhyar Thyine Su 寺院が現われました。辺境の小さな寺院ですが、漆器博物館の学芸員 Aung Kyaw Soe Ltc 氏が言う通り、正に最高の完成度のフレスコ画でした。洗練された線と色彩の仏画は目を見張ります。写真撮影は不可ですので、目と心に焼き付けました。
近くのLay Myet Hnar Complex という寺院にもフレスコ画がありました。寺院の裏手に回ると牧童が羊を放牧しており、夕日の逆光で黄金に輝く古びた寺院群と羊達の光景は幻想的でした。
そこから5㎞程を自転車で宿に戻り、夕食はまたア・リトル・ビット・オブ・バガンでインドカレーセットを食べました。
明日はニューバガン方面を取材します。しかし、この後何の悪因か自転車トラブルが続く事になります。その模様はまた次回といたしましょう。
日本画家・絵本画家 後藤 仁
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