2014-05-03
「東北絵本寄贈プロジェクト」を通して
東北取材旅行の際に立ち寄った、福島県の川俣町立福田小学校・幼稚園の校長先生からはご丁寧なお返事を頂きました。宮城県教育庁を通して宮城県内の幼稚園・小学校等に計85冊の「絵本」を寄贈した際には、可愛らしい子供達の笑顔が写った返礼を頂きました。拙作絵本が活用されている様子を知ると、「絵本」を贈って良かったなと、素直に嬉しくなります。



(※個人のプライバシー保護の為、画像を縮小しています。)
私が新たに入会した日本児童出版美術家連盟(童美連)でも、東北チャリティ展を開催し、東北(岩手、福島県)への寄付を進めております。(私は今回の展覧会出品には間に合いませんでした。)日本保育協会を通しての寄付となる為、協会事務所のない宮城県内への寄付は不可能との事で、その部分は残念ですが、絵本画家・イラストレーターのプロ集団が、この様な活動を遂行しているという意味は大きいでしょう。
私自身も「絵本」を東北へ贈り、ホームページ・ブログ等で何だかんだ書いておりますので、あまり言えた義理ではないのですが、私の場合、日本画家・絵本画家という確かな道がある上に、余暇を活用してこの様な活動もしております。うがった見方かも知れませんが、最近感じる事は、東北復興という新たな価値観を元に、ご自身の存在感を高める為に大々的に活動している団体等が増えているのではないかという疑念です。何もしない人よりはずっと良い事なのでしょうし、東北復興の為に多くの労力を注ぎ込んでおられる事は間違いないのかも知れませんが、よくその活動内容を知ると、その”質”は決して高いとは言えない場合もあります。私は厳しいプロの世界で生きて来ましたので、なおさらそう感じるのです。非営利団体というわりには、結構資金繰りが良すぎるように感じる場合もあります。人間がやっている事ですので、当然仕方がない部分もありますが、ただ自分の存在価値・地位を高める為だけに、実質を伴わない活動が横行しているとしたら、憂慮すべき事です。
話は変わりますが、絵本出版・展覧会開催を経て、幾つかの出版社・画廊等から次の作品や展覧会開催の話が起こっております。ただ、私自身は描きたい作品・テーマが山程あるのですが、昨今の出版不況・美術不況とやらで、なかなか順調には物事が運ばないのが現状です。「日本画」の世界も「絵本」の世界も厳しいのが現実ですが、この様な時代でも、本当に良い作品を創ろうという高い理想と気概を元に、作り手側が最大限切磋琢磨していかなければいけないと思うのです。
明治・大正・昭和初期には質の高い「日本画」が多く生まれましたが、ここ数十年は権威主義・類型化の弊害が目立っています。
イギリスでは100年余り前に絵本黄金時代があり、芸術性の高い極めて優れた「絵本」作品が生み出され、日本では50~60年前の絵本草創期には斬新で意欲的な作品が多く見られました。しかし、ここ数十年は日本絵本界もある種のマンネリズムに陥っているのではないか・・・とにかく売れれば良いという営利主義に陥っているのではないか・・・という疑念を抱いています。
現在、私には果たして何が出来るだろうかと自問自答しつつ、次の制作へ高い意識を集中させているところです。作家も出版社も画商も”時代”を言い訳にせず、どんな困難な時代でも高い理想と気概を失わずに、本当に優れた作品を生み出すにはどうすれば良いのかを身命を賭して模索して行かなければいけないと、常日頃自戒しています。
日本画家・絵本画家 後藤 仁
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