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2013-12-23

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』出版までの永き道のり その15(完結篇)

 絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』(福音館書店こどものとも)の原画制作を終えた私は、2012年3月8日に福音館書店に原画20点を納品しました。長い歳月心を込めて描いて来た作品は、自分の子供の様でもあり、手を離れる時にはいつも一抹のさみしさが残ります。福音館書店編集部は、この原画をとても気に入ってくれた様です。
 福音館書店こどものとも、は毎月異なる作家が「絵本」を手掛けますので、かなり先まで出版予定が組まれています。そんな関係もあり、私の「絵本」も2013年3月号と随分前から決定していました。しかし、更にその相当前から描き始めていた私は、提出期限よりかなり早く描き終えた事になるのです。

 色校正までの間に、岩波書店の新作絵本『犬になった王子 チベットの民話』の取材で、中国チベット自治区・四川省等に行ったり、そのラフスケッチを練ったり、君島久子先生・岩波書店編集部と打ち合わせをしたりしていました。

 2012年9月25日に福音館書店の打ち合わせがあり、「第一場面」を少し手直しして、10月3日に再度納品しました。編集部も絵本制作にかなりのこだわりがあると見えて、作家にとっては大変なのですが、この様な妥協をしない姿勢はとても良いのではないかと思いました。
 11月16日に福音館書店本社で絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』「色校正」をしました。3時間あまりかけて、原画と印刷を照らし合わせ、一枚一枚、色の変更指定をしていきました。「日本画」の美しい色は、印刷ではどうしてもくすんでしまい上手く発色しません。特に胡粉の白の抜けと、墨等の黒の締まり、緑青の透明感、朱の強い発色等は、良くは再現出来ませんでした。「日本画」の絵具は、孔雀石・藍銅鉱・水晶等の宝石・鉱物類や、カキの貝殻や、金・銀・水銀・鉛等の金属類等で出来ており、その美しさを印刷で表現するのは最初から限界があるのです。(ぜひ、「絵本原画展」で原画をご覧下さい。)しかし、福音館書店編集部と印刷会社の精興社も最大限の努力をしていただき、「絵本」として納得が出来る高品質な色再現をしていただけたと思います。細部の描写等は予想以上に再現出来ていたので、技術の高さに感心しました。

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表
絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・裏絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・裏



 こうして画家の私と、文章の君島久子先生と、編集部の三位一体の絵本制作は完了し、2013年3月号の出版となりました。
 この「絵本」は3月号というので、私は3月1日発行と思い込んで絵本案内等をしていたのですが、実際は2月1日発行で最後は逆に少し焦る破目になりましたが、無事出版出来てホッとしました・・・。
 2月22日には原画が私のアトリエへ里帰りし、この後「絵本原画展」であちこちを旅する事となります~。
 

 通常の「日本画」の制作では、取材・構想・エスキース(下図)・本画制作と基本的に一人での孤独な仕事となります。人によっては師匠や画商等の意見を取り入れたりする様ですが、本来一人で全てをこなすのが絵描きの理想です。
 それに対して「絵本」は、画家と、文筆家と、(この2つを兼ねる人も多く、私もいずれ「文」も手掛けたいと考えています。)編集者の三位一体での制作になります。印刷会社等も含めると実に多くの人の手が加わる事で生み出されており、「日本画」とはまた違った共同制作の面白味がある事が分かりました。
 今まで絵描きの孤独な制作スタイルで生きて来た私には、最初こそ多くの指摘が加えられる事に対しての抵抗感がありましたが、それが「絵本」の普遍性・一般大衆性にもつながる・・・と、だんだん理解されて来ると、それも楽しく感じる様になりました。
 今後も「日本画」の孤独・個性探求の世界で描いていくとともに、「絵本」の集団・一般大衆化の世界でも描いていきたいと願っております。それぞれ違った魅力を持ち合わしており、お互いが上手く作用すれば、更に面白い「後藤 仁ワールド」が出現するのではないかと私自身期待しています。

          *

 今回、制作に対してとても真面目で熱心な編集者達と出会う事が出来て、私は幸運であったと実感しています。また、今日までの多くの方々のご支援があったからこそ、こうして一冊の「絵本」に結実したと感謝の念を抱いております。
 私の初絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』の出版を支えて下さいました、君島久子先生を始め、編集部の方々、今まで応援して下さいました皆様に心から御礼申し上げます。
 また、今後とも「日本画」「絵本」の世界で誠心誠意、制作に尽力してまいりたい所存ですので、ご教導の程よろしくお願い申し上げます。 日本画家・絵本画家 後藤 仁 
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テーマ : 絵本・制作・イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

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後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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