2019-11-19
東京藝術大学デザイン科アート&デザイン「金唐革紙特別講義」開催、後藤 仁
金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術の手製高級壁紙)を実際製作した経験を持ち、その製法を詳しく知る人物は、現在ほんの数名(3名程)しかいません。その中でも私は、学生時代から約12年間、日本画制作のかたわら、金唐革紙製作にも打ち込み、現代作家の中で最も多くの実質的製作にたずさわったのです。今では、日本画家・絵本画家としての顔以外に、「国選定保存技術 金唐革紙 製作技術保持者」としても国内外に知られています。
この日は、東京藝術大学デザイン科で1時間程、「金唐革紙の歴史とデザインの変遷」の講義をしました。国重要文化財の入船山記念館(呉市)、移情閣・孫文記念館(神戸市)、旧岩崎邸(台東区)等の金唐革紙を製作中の貴重な画像をお見せし、最後には何種類もの金唐革紙の実物を手に取って見てもらいました。
その後、上野の不忍池にほど近い「旧岩崎邸庭園(国重要文化財)」に歩いて移動。文化庁のご依頼で、2002年に1年がかりで私を中心に復元製作された金唐革紙がある実際の現場を、学生の皆さんと鑑賞しました。旧岩崎邸の洋館2階に、2種類の金唐革紙(箔有り・箔無し)が貼られています。
次に旧岩崎邸の和館も拝見。和館には、近代日本画の創始者、橋本雅邦の障壁画が貼られていますが、私の師の後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)、その師の山本丘人先生(文化勲章受章者)、その師の松岡映丘の師が、橋本雅邦となります。日本画はさらに、江戸時代以前の狩野派・琳派・円山四条派・土佐派 等にさかのぼっていけるのです。こうして日本画の伝統と技法は、日本の歴史の中に脈々と受け継がれているのです・・・。
今の学生は、授業中では物静かな人が多いようですが、この現場にて、何人かは幾つかの質問をしてくれましたね。実物の作品を目の前にして、多少は何か感じてもらえたでしょうか~。
撞球室(ビリヤード室)前で一旦解散し、建築家・隈 研吾さん等が関わり旧岩崎邸庭園内に最近建設された「文化庁 国立近現代建築資料館」を、押元先生 他、数名で見学。けっこう立派な建物で、建築に興味のある人は必見ですが、この日の見学者は少なかったです・・・。
こうして、今年の「金唐革紙 特別講義」も無事終了いたしました。次世代を担うであろう若き創造者達に、何か一つでもプラスになるものがあればいいのですが・・・。
絵師(日本画家・絵本画家、金唐革紙 製作技術保持者)後藤 仁










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