2019-07-14
「1%フォー・アート」シンポジウム2019(古賀政男音楽博物館内 けやきホール)後藤 仁
「1%フォー・アート」とは、公共建築物の建設費の約1%を、芸術・美術の振興、美術作品の設置・購入にあてようという取り組み・制度の事で、欧米では20世紀前半には導入され、かなり普及していますが、日本ではなかなか進んでいないそうです。更には、バブル経済の崩壊後はますます下火傾向になったという事です。今回のシンポジウムでは、日本でもその発想を広げて、実現していこうという趣旨で開催されました。


第1部・基調講演は、NPO法人アート&ソサエティ研究センター代表理事 工藤安代 先生による「アメリカにおける1%フォー・アート」の解説でした。アメリカでは、現代アート系彫刻・空間芸術が主体ですが、ビジネス的要素も含めてかなり考え方・実施状況が進んでいます。
第2部では、ノーベル賞を受賞された化学者の野依良治 先生、日本交通文化協会事務局長・毎日新聞社客員編集委員の西川 恵 先生、多摩美術大学名誉教授・洋画家の大津英敏 先生、東京藝術大学名誉教授・彫刻家の米林雄一 先生がそれぞれ講演をなさいました。シンポジウム コーディネーターは、女子美術大学名誉教授・洋画家の入江 観 先生です。誠に豪華な顔ぶれの講演会となりました。
野依良治 先生のお話は、「今は"芸術"と"科学"が共創していかなければならない時代に入った」「社会のための芸術、人類生存のための芸術へ」「芸術は国民の生命力の根源、国家生存の条件である」という誠に力強いメッセージを謳われており、感動的なものでした。その他の先生方も、西川 恵 先生のフランスでの現状解説、大津英敏 先生・米林雄一 先生のパブリックアートのご経験談 等、とても深く濃い内容で、共感するお話も多かったです。素晴らしい方向性を目指すシンポジウムを拝聴できて、誠に充実した良い時間を過ごせました。
最後に、人間国宝・文化功労者の狂言師、野村 萬 先生(野村萬斎さんの伯父)のお言葉で締めくくられました。
講演会の後、日本児童出版美術家連盟(童美連)の理事長・あんびるやすこ さん、日本図書設計家協会の竹田壮一朗さんらがいらっしゃったので、一緒にお茶をしてから帰りました。
私も多忙な毎日ではありますが、なかなか貴重で面白い一日となりました。
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〔私・後藤 仁の見解〕
日本でも今後、現在流行している現代アートやマンガ・アニメ文化を中心に、この「1%フォー・アート」のような動きが活発化する可能性があります。政府や各自治体もそれらにはかなり注目しています。
確かに大いに進んでほしい取り組みなのですが、私としては、それと同時に、1000年を超える歴史を持つ「日本画」 等の日本の伝統文化・美術も次世代に活かせるような、幅の広い取り組みがなされると良いなと期待しています。
絵師(日本画家・絵本画家)、日本美術家連盟会員、東京藝術大学非常勤講師 後藤 仁
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