2013-05-05

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』出版までの永き道のり その6

地坪風雨橋地坪風雨橋

程陽風雨橋程陽風雨橋

広西チワン族自治区トン族程陽トン族 舞踊

広西チワン族自治区程陽トン族村にて 後藤 仁


 2008年4月26日、「肇興(ちょうこう)」での有意義な時もあっと言う間に終わり、車で谷間を越えて「地坪(ちつぼ)」に向かいました。ここには有名な「地坪風雨橋」があります。近年の大雨で古くからの橋は流されてしまいましたが、再建された新しい橋もとても立派で、トン族の建築技術の確かさを物語ります。
 この先、貴州省から広西チワン族自治区に入り、「程陽(ていよう)」に着きました。ここでは最も有名な風雨橋である「程陽風雨橋」を見ました。かなり巨大な木造橋で、非常に複雑な構造をしています。周囲の田園には大きな水車がいくつも回っていて良い風情です。観光客も多い様で、橋の中ではおばあさん達が土産物を売っていました。
 程陽風雨橋の近くのトン族村に団体客が来ていたので、トン族舞踊公演をしていました。そこで、私もまぎれて見物しました。貴州省のトン族とは随分衣装の雰囲気が異なり、チワン族の影響を受けている様です。チワン族の衣装は、ミャオ族・トン族に比べてシンプルなデザインです。
 この日は橋の裏手にある、山小屋風の味のある宿泊施設に泊まりました。お腹の調子はほぼ完治していましたが、初日の夜から実に10日あまりも具合が悪かった事になります。
 
 絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』の原話採集地は広西チワン族自治区のトン族村という事ですが、自治区内のトン族は北部のこの辺りにしか居住していないので、きっとこの近辺が話の舞台だと思われます。


 27日は、三江(さんこう)を通り、「桂林」に到着しました。ここでドライバーの黄(ホワン)さんともお別れなので、最後に昼食でもと思っていたのですが、「これから時間をかけて、凱裏まで戻らなければいけない。」といった様子で、すぐに車で去ってしまいました。この辺りはさすがにビジネス的で、結構人情家の私は少し寂しいものを感じました。
 桂林では象山公園の象鼻山(本当に象の形をしています)に登ったり、公園内のオウムショーを見物しました。解説は中国語で全く分からないのですが、オウムはローラースケートやブランコに乗ったりして、とても良く訓練されています。 
 シーズンオフの時期の桂林の旅館は大きく値引き出来ますので、安い旅館を見つけられました。手配旅行の分が高くついたので助かります。翌日は「灕江(りこう)下り」をしたかったのですが、日程が一日しか無く、終点の陽朔(ようさく)からの帰路の交通の便の悪さ等を考えると、やはり一日ツアーに参加した方が良いと分かりましたので、旅館で中国人専用の安いツアーを申し込みました。

桂林桂林 灕江下り


 28日は、朝からバスでピックアップされて船着場に向かい、そこから「灕江下り」の始まりです。大きな観光船で川を下りながら桂林の景色を楽しみます。最初は甲板で見物していた観光客もしばらくすると皆船室に戻り、食事をしている様でした。私は最初から最後まで甲板に出て、桂林の山々の移り変わりをスケッチしたり写真に撮ったりしていました。私を見かねた中国人がお弁当を持って来てくれましたが、それを頬張りながらも、「この美しい景色を見逃してなるものか。」と、スケッチを続けました。桂林は水墨画の故郷として有名ですが、その山水の幻想的な光景が、古来多くの文人墨客をとりこにして来た理由が理解出来ました。
 「陽朔」からはバスで途中の大きな鍾乳洞や、巨大ガジュマル公園に寄ったりしながら旅館に帰りました。中国人専用のツアーは格安で助かったのですが、ガイドは中国語のみで私には聞き取れません。最初、バスの中で同席したアメリカ人らしき一人の老婆に(外国人らしき人は私とこの老婆だけで、後は全て中国人です。)、英語の堪能な中国人の2人の若者がしきりと話しかけていたのですが、船を降りて集合した時には、若者と共に老婆もいなくなっていました。どこか変な所に連れていかれていなければ良いのにな、と思うばかりでした。逆に確か最初はいなかった様な人が途中から増えていたり(途中で自由に出入りが出来る仕組みなのかも知れませんが?)、結構人数確認等もアバウトな様子ですので、格安なのは良いのですが、日本人には注意が必要でしょう。私も途中言葉が分からないので、はぐれそうになった時もありました。

 29日は桂林から北京に飛行機で移動です。近年はリコンファーム(予約再確認)もいらなくなり、Eチケットなる便利なシステムも出来て、一人旅も楽になりました。英語の苦手な私は、いつもそれらの手続きで手間取っていましたから。
 「北京」では日本からFAXで予約していた安宿に泊まりました。北京の中心地(王府井まで歩いて5分)で素泊まり一泊80元(約1000円)は格安です。ただ、部屋は全て地下にありました。無機的な白い廊下と狭くて窓の無いベッドだけの部屋で、トイレ・シャワーは共同です。エレベーターの前にカナリアが飼ってあり一見愛玩用に見えますが、おそらくは有毒ガスの探知用でしょう。しかし、アジアの旅ではいつも一泊150~600円位のゲストハウスに宿泊していますので、私には安いだけで充分でした。
 
 30日は故宮博物院で豪華な建物や美術品を鑑賞し、5月1日は景山公園で故宮の全景や牡丹の花をスケッチしたり、北海公園をそぞろ歩きました。ようやく胃の調子も良くなったので、夜は王府井の夜市で色々つまみ食いをしました。

 5月2日、手配旅行が高くついた分全体の日程を少し抑えたので、少々旅行期間の物足りなさを感じつつ、北京から成田への帰国便に乗りました。海外取材旅行ではいつも何らかのトラブルに見舞われるのですが、今回の旅では、ひどい胃もたれでした。

                     *
 
 さあ、日本に帰り、絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』の、「ラフスケッチ」制作の始まりです。今回の取材旅行は、いつもの自由旅行の倍以上の予算がかかってしまいましたが、その分、かなり詳細な取材が出来たのではないかと思います。
 
 この続きは、また次回としましょう。

 

  (次回からのカテゴリは、「写生旅行(海外)」から「ながいかみのむすめチャンファメイ 制作」に戻ります。)
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No title

このように詳しい写生紀行を読ませていただいて、とても嬉しいです。絵本の畑に植えているのはなんでしょう。苗を籠に入れて植えていますね。米の苗ですか?
いつも質問ばかりでごめんなさい。

畑の作物について

 絵本「ながいかみのむすめ チャンファメイ」の作物については、君島久子先生のご意見を多く取り入れさせていただきました。
 最初のラフスケッチでは、私が現地で見た様な立派な「棚田」を描いていたのですが、やはり寒村なのであまり立派な田畑はないであろうというご意見と、田の場合中国では「水田」と表記する場合が多く、原話には「田」としか記載しておらず、「畑」と考えて良いのではないかとのご意見をいただきました。

 絵本では時間の飛躍を行っており、この最後の場面は畑で菜っ葉を収穫している所です。しかし、おっしゃる通り、植えている所ととらえていただいても構いません。
 現地では、菜っ葉の多くは軒先に干しておいてから、調理するようです。最初の場面の、家の前に干してある緑の物がそれです。ちなみに、もう少し大きな藍色の干してある物は、自分たちで染色した木綿の反物で、これを仕立てて衣服になります。
 ブタやニワトリも絵本の様に、多くは放し飼いにされています。ただ、現在の中国では西洋種の白いブタを飼っていますが、昔はラオスやベトナムで現在も見られる様な、原種に近い黒ブタだったと思われます。

 この様に、絵本の中の世界は、私が現地取材で見た光景と研究成果を元に、忠実に描いています。その辺りのリアルさを楽しんでいただけますとうれしいです。

No title

詳しくありがとありました。
ああ、めが悪いなあと思ってしまいました。
そうやってはじめを見るとちゃんと干してありますね。
紺色は布だとすぐ分かりました。
ほとんど二人で作業していて、ひとりの人は、なんだかうらやましそうにみていると感じました。ふふふ。
遊びも興味あります。
ひだりの二人はケンケンパーみたいな遊びなのでしょうか。

子供の遊び

 絵本「ながいかみのむすめ チャンファメイ」の最後の場面は、私の好きな洋画家、ピーテル・ブリューゲルの子供の遊びを描いた作品に対するオマージュでもあります。この辺りの詳しい話は、このブログでこの後記述していく予定ですので、続きを読んでいって下さい。

 現地で実際見たものや、近隣国のタイ、ラオス、ベトナムで見たものや、資料で調べたものを元に描いています。日本の昔からの遊びと良く似ており、懐かしき情景です。
 左上のは、「ケンケンパー」ですが、描いてある図は本来は日本と同じような案山子の様な、十字の様な図を描きます。最初の線描きでこの様に描いてしまい、変更できなくなったので、こんな図もあるだろうと解釈してそのまま描きました。
 その他に、「蹴鞠(けまり)」「縄跳び」「こま回し」「竹馬」を描きました。

 中国、タイ、ラオス、ベトナム等の旅では、その他に「石蹴り」「ゴム飛び」「ビー玉遊び」「木製の手作り自転車」「木登り」「川での水泳」等の懐かしい遊びを多く見ました。子供達は皆、外で元気に遊んでいます。
 今の日本の子供達も室内でゲームばかりやらずに、屋外で自分たちで工夫した遊びをするのが一番良いのにな~という私からのメッセージです。
プロフィール

後藤 仁(GOTO JIN)

Author:後藤 仁(GOTO JIN)
 ~後藤 仁 公式ブログ1~
日本画家・絵本画家 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

  〔後藤 仁 略歴〕
1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校美術科で日本画を始める。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、後藤純男先生(恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。卒業以降は日本画家として活動し、中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は絵本の原画制作に力を入れる。
○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞等への出演・掲載も多い。
○東京藝術大学・デザイン科非常勤講師。東京造形大学・絵本講師。金唐革紙保存会 主宰。日本児童出版美術家連盟(童美連)(太田大八先生、赤羽末吉先生、いわさきちひろ先生らが創設)会員・理事。絵本学会(太田大八先生らが創設、現会長:松本 猛先生)会員。日本中国文化交流協会(井上 靖先生らが創設)会員。この本だいすきの会(代表:小松崎 進先生)会員。千葉県松戸市在住。

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