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2018-01-09

【日本画・美人画論】日本画・美人画の真髄とは 後藤 仁

絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』表紙・部分絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(表紙・部分) 後藤 仁

【日本画・美人画論】 日本画・美人画の真髄とはどこにあるのだろうか?

 江戸時代までの狩野派、琳派、大和絵各派、水墨画各派、浮世絵各派といった様々な流派をまとめて、「日本画」というカテゴリーが明治の初めに確立してから、およそ140年が経った。明治時代には、竹内栖鳳がライオンの絵を描いただけで、「これは日本画の花鳥画の画題にあらず、日本画とは言い難し」と師匠筋から厳しく批判・非難されたそうだ。
 現在では、日本画の画題・テーマに関しては何でもありの感であり、日本画の画材(岩絵の具、水干絵の具、膠 等)を用いさえしていれば「日本画」とされる。
 しかし、それでは日本画材を使用していれば、何もかもが本格的な日本画とされる事になり、日本画界がじょじょに勢いを失いつつある現在、イラストレーション・マンガ・アニメーションが全盛の昨今、日本画が存在する価値観を見出しにくい。私はやはり、他の絵画ジャンルにはない「日本画」ならではの独自性・優位性を意識して描いていきたいのだ・・・・。

日本画「トン族琵琶歌~チャンファメイ」日本画「トン族琵琶歌~チャンファメイ(中国 貴州省)」(P25号・部分) 後藤 仁
 
 絵画には「画品」という観念がある。古来より、日本画も美人画も、「画品」、つまり”絵の品格”というものが大切だと考えられてきた。あと、絵画作品は、「骨格」がしっかりしていないといけないとされる。骨格とは、ただ人や動物の骨をとらえる事をさすだけでななく、物体の構造を解明しようとする精神の働きであり、万物の”本質”に迫ろうとする意識の事で、人物画のみならず、花鳥画・風景画・静物画 等、全ての絵画ジャンルに必要な要素である。その辺りが、絵画と、イラスト・マンガ・アニメとを分ける重要なポイントなのではないか。
 本来、絵描きの私が他人の作品をとやかく言う立場ではないのだが、近年の日本画界の動向を見ていると思う事が多々あるので、どうせ私の絵画論など出版物(本)になる機会は少ないだろうから、ブログで述べておこうと思う。~~

 最近、私は、日本画家が「絵本」を描く場合の問題点を、度々ブログ等でも述べてきたが、逆に近年、他ジャンルから参入し、日本画家を名のる人も度々見かける。かつて、院展・日展・創画会の三大派閥一辺倒だった保守的・閉鎖的な日本画界に、近年、無所属作家の活躍が目立ち始め、業界の再編成が行われようとしている。そのような日本画壇・日本画団体の空洞化・弱体化の空気を察してか、他ジャンルから日本画界に新規参入する作家も度々見かけるようになってきた。様々な絵画ジャンルが垣根を越えて切磋琢磨し合うのは実に良い事で、絵画界全体の活性化につながる。ただ、それぞれのジャンルには、それぞれのこだわりもあり、人間関係もあるので、実力のない者の安易なる他ジャンル参入は好結果を招かないものである。
 近年になり墨彩画を描き出した有名芸能人が日本画家と名のっている例等は論外だが、ある著名な人物画イラストレーターも近年、日本画家を名のり出したし、独学で日本画を学んだとかいう、ある美人画家は最近、話題であるらしい。
 後者の二人は、上手いは確かに上手い人達であるが、いずれも本格的に日本画や絵画の基礎(デッサン・写生、着彩、模写 等)を学んでいないようで、絵画的な骨格感を感じない。また、その三者目の美人画家は、絵が顕著に写真的でもあり、画品に欠けるところがあり、私等が見ると、通俗性が目につき、ひきつけられないのである。
 また、幼少期や大学時代から日本画をおさめた本格的とされる日本画家でも、同様の問題を感じる作家は少なくない。近年、テレビにも頻出する、美人画・家ならぬ美人・画家ともてはやされる日本画家の絵は、上手いは上手いが、やはり画品に大きく欠け、どうしても良さが理解できない。まあ、いずれも今、とても人気の方々らしいので、少なくとも私よりは腕は確かなのだろう・・・。

日本画「クマリ-The Living Goddess-(ネパール)」日本画「クマリ -The Living Goddess-(ネパール)」(F50号) 後藤 仁

日本画「Beautiful village - 美しき村 -(ベトナム)」日本画「Beautiful village - 美しき村 -(ベトナム)」(F30号) 後藤 仁
 
 これまでの日本画史上でも、日本画の「画品」については個性・勢い等を阻害する要因とも考えられ、大正時代や昭和後期~平成時代には、品格にとらわれずに、下品だろうと通俗的だろうとエログロであろうと、インパクト・芸術性があれば良しとする考えが度々台頭してきた。たしかに私も若い時分(30歳代まで)にはそのように考えた。ただ、今日のように多くの絵画ジャンルが入り乱れる時代、日本画の独自性・優位性が見出せず、このまま行けば日本画界の衰退が必定の現代で、私が日本画ならではの本質的に重要な”真髄”とは何かを考察する時、改めて「画品」というものの重きに思い至るのである。
 大正から昭和初期に活躍した美人画家の鏑木清方、・・・さかのぼれば、長谷川等伯・円山応挙・伊藤若冲 等の崇高なまでの「画品」が私の目指したい境地であるが、容易には到達できない高みにある。
 私はこれからも高き審美眼・美意識を磨き、保守的・様式的ではない、清新で深遠な私ならではの「画品」を追求し、日々、制作にいそしみたい。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁
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ジャンル : 学問・文化・芸術

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後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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