2017-01-08

スリランカ写生旅行 その11

 ・・・・スリランカの旅も残り少なくなりましたが、一旦、ポロンナルワの最終日の朝に戻ります。新年そうそう、黒虫の話もどうかと思い今回に回しましたが、ポロンナルワの宿では、その後も連夜、黒虫との格闘が続いていたのです。18日の朝に見た超巨大な黒虫は、その後も朝になる度に現れましたが、毎回取り逃がしていました。「あれはこの宿のボス虫に違いない。」と確信し、最終日までに決着をつけようと決めていました。
 21日、ポロンナルワでの最後の朝、前日の「ペラヘラ祭」の帰りにアイスクリームのような物を踏み付けたと見え、靴の底に甘い香りの物体がこびり付いていました。シャワー室で靴底を洗っていると、その甘い香りに引き付けられたようで、早速、あの巨漢黒虫が出現しました。ずんぐりと立体的で、体長は日本の物より少し長い位ですが、胴回りが4倍位は太いのです。反射的に、洗っていた靴で黒虫をパチンとやりました。直後に、ボスの敵討ちに現れた中型の黒虫も、続けざまにパチンと返り討ちしました。
 この宿は安くてオーナーも良い方でしたが、この虫達の多さだけには閉口しました。しかし日中は、不殺生をとなえたブッダの遺跡を殊勝そうな顔で拝見しながら、都合に応じて殺生を行う私達人間とは、いかに自分勝手で残酷な生き物なのだろうかとつくづく思うのでした。・・・・・


 「スリランカ写生旅行」18日目、2016年6月23日(木)。アヌラーダプラ遺跡巡りの2日目です。ここでは連夜、猛暑と爆音に悩まされていたのですが、今朝起きると、何故か全く汗をかいていません。スリランカでは毎朝、汗だくになっていたので、逆に不吉なものを感じました。案の定、体はかなりだるくて、完全にお腹をこわしていました。前日の昼食のチキンカレーが悪かったのか、熱中症の症状なのか、理由ははっきりしませんが、かなり酷い体調です。強めの下痢・だるさの他に、軽い頭痛と微熱もあります。それでも葛根湯の錠剤を飲んで、朝食の菓子とバナナを軽く食べて、7:00頃自転車で出発しました。
 まずは遺跡群の南方に向かい、「イスルムニヤ精舎」(入場料・別料金200Rs)を見学します。アヌラーダプラの他の寺院とは雰囲気が異なり、境内中央に涅槃像が安置された本堂があって日本の寺院に近い造りです。本堂裏の巨石に登ると、アヌラーダプラの町が見渡せます。宝物殿には優れた彫像が多数置かれています。美しい寺院なので、どこかスケッチをしたかったのですが、体がだるくて力が出ませんので、この日は写真を撮るだけにしました。スケッチにはかなりの集中力と体力を必要とするのです。
 自転車で北上し、図書館で3550Rsの遺跡入場券を購入し、更に北上し、計4km近く走りました。体調が良くないのでフラフラです。遺跡群の北端、「アバヤギリ大塔」に到着。高さ75mという巨大なダーガバ(仏塔)で、かつてはスリランカの大乗仏教の総本山だったそうです(現在のスリランカには上座部仏教しかありません)。次に「ラトゥナ・プラサーダ」という、スリランカで一番美しいとされるガードストーン(宮殿や寺院の入口左右にある彫像)が残る宮殿跡を見物。次に、スリランカ一美しいというムーンストーン(半円形の石板)が残る「クイーンズ・パビリオン(王妃の建物)」を見物。ムーンストーン全体で宇宙の真理を表しているといい、ゾウ(誕生の象徴)、ウマ(老齢の象徴)、ライオン(病の象徴)、牡牛(死の象徴)が彫られていて、この4種の動物で輪廻を意味するのだそうです。まさに、ブッダのおっしゃられた「四苦」、つまり、「生老病死」の事ですが、・・・このブッダ(仏陀、お釈迦様)の伝記を知りたい方は、私が挿絵を描いた『おしゃかさま物語』 (本間正樹 文、後藤 仁 絵/佼成出版社) 直販のみ: 佼成出版社・佼成ショップ https://www.koseishop.com/product.jsp?id=25208  を読むとよく分かりますよ。(ちなみに、時代が下るポロンナルワのムーンストーンでは、ヒンドゥー教の影響があり、神である牛が死を象徴するのは良くないとの理由で牛が描かれていないそうです。)
 次に「サマーディ仏像」という大きな仏像を拝見し、「クッタム・ポクナ(ツイン・ポンズ)」という僧の沐浴場跡を見物。最後に「アバヤギリ博物館」を急ぎ足で見学したところで11:00頃、体力の限界が来ました。しかし今日で、アヌラーダプラの主要遺跡は全て見終わりました。朝から体調が優れない上に、何時間も動き回ったので、お腹はグルグルいっていますし頭はボーッとしています。何とか4kmの道のりを宿までたどり着き、シャワーを浴びて、昼食はバナナとヨーグルトを軽く食べるだけで済ませました。(行きに約2km、北上に約4km、帰りに約4km、この日だけで合計 約10kmも自転車で走っています。体調が悪いというのに、随分無茶をしています。)
 午後はくたばったように部屋で寝ていたのですが、気分が悪くて全く食欲が出ないので、夕食時には塩分を取るために塩気のあるピーナッツを数粒食べて水を飲むのが精一杯でした。夕方から夜にかけて体調は悪くなる一方です。しかし、こんな時にも旅の経験がものを言います。これ位までなら、よく休憩して塩と水分を取ってさえいれば、自力で回復できるという自信がありました。
 この日は特に早めに夕方8時頃には睡眠に入りましたが、外の音楽はこの夜も容易に寝かしてくれませんでした。

 「スリランカ写生旅行」19日目、6月24日(金)。朝6時過ぎに起きると、体調はわずかながら回復して来ていました。食欲は無いのですが、何とか朝食のバナナ、菓子、牛乳を飲み込むと、7:00には自転車で遺跡巡りに出発しました。
 昨日、体調不良で、「イスルムニヤ精舎」(入場料・別料金200Rs)をしっかり見れなかったので、再び精舎を訪れました。最後の力を振り絞って、境内の巨石に彫られたゾウの家族の彫像を、F4号スケッチブックに30分余りかけて写生。宝物殿の「恋人の像 The Lovers」と名の付いた、サーリヤ王子と恋人マーラとされる5世紀に作られた優れた彫像を、F4号に30分余り写生。警備をしていた警察が傍らでその様子を見ていましたが、ポロンナルワ等の他の地域の警察と違って、何故かアヌラーダプラの警察は優しい感じの人が多いのです。ここの方が田舎なので、人の性格ものどかなのかも知れません。最初に「スケッチしていいか」と聞くと、「いいよ」と快い返事を返してくれました。描き終わると、「その絵をもらえないか」と言うので、「現物は無理だが写真を撮るのはいいよ」と答えると、喜んでスマホで撮影していました。
 「イスルムニヤ精舎」の手前に大きな池があり、きれいな蓮の花が咲いています。小鳥もさえずり楽園のようです。この蓮をSM号スケッチブックに20分程スケッチ。その途中、野良犬が私に近寄って来ました。すると、つがいらしき2羽の小鳥が鋭い声で犬に襲いかかります。その鳥は前に、キャンディ近郊のペーラーデニヤ植物園でスケッチした、Red Wattled Lapwing という鳥でした。犬はしばらく粘っていましたが、最後は鳥の剣幕に負けて退散しました。スケッチを終えて、犬がいなくなった後にその付近を見てみると、地面に鳥の巣があり、2cm程のかわいい卵が3個ありました。私が巣に近付いても、鳥は遠巻きに見ているだけで、威嚇はして来ません。巣の周りに丁度良い大きさで木組みがしてあるのですが、これは巣が出来た後に、人が巣を守る為に作ったものに違いありません。鳥は、ここの人間が自分達の卵に危害を加えない事をよく知っているのでしょう。スリランカの人々の優しく思いやりのある心根が伝わりました・・・。
 美しい蓮の花と小鳥達のミニドラマを見て気分良くなった私は、今日はこの一か所だけにして、まだ調子の戻らない体を引きずって12:00頃、宿に戻りました。帰路、露店がたくさん集まった通りに立ち寄って、私が講師を務める絵画教室の受講者の方や、日本児童出版美術家連盟(童美連)の絵描き仲間や、親類・友人・知人にお渡しする土産を探しました。金属製のスリランカの腕輪(ブレスレット)が面白いので、インド等に比べて案外物価は安くはないのですが、96個買い入れました。(前は70個位で足りたのですが、最近お世話になる方が増える一方なので、帰国後手渡しするのですが、96個でも足りない位でした。)後は自分用の安いシャツ(500Rs)を購入。
 昼食は軽く、パン、バナナ、ヨーグルトを食べました。お腹の具合はまだまだ良くないですし、だるさも続いています。

 この後、「サルガド・ホテル&ベーカリー」にチップ50Rsを残して、「ホテル・シャリニ」(一泊部屋代3500Rs、朝食500Rs、エアコン・ホットシャワー・トイレ付)に移動しました。「サルガド・ホテル」は便利な立地にあるのですが、メイン通りに面しているので毎晩響き渡る騒音が難点でした。連泊する人には少々、きついかも知れません。「ホテル・シャリニ」の人が言うには、あの謎の騒音はパブの音楽だそうです。今後、スリランカの近代化を進める上では、騒音規制が必要になって来るでしょう。
 さすがに中級ホテル、「ホテル・シャリニ」の部屋はきれいで快適です。シャワーは上からだけではなく、前面からも湯が出て来る高機能型です。普段私は、現代文明・科学万能説に反論を唱えがちですが、今回の旅では改めてエアコンという文明の利器のすごさを実感しました。所詮私も、現代文明・コンピュータ社会に毒された軟弱な都会人でしかないのですね・・・。
 午後は前後を忘れて爆睡し、夕食に軽くバナナ、ヨーグルトを食べると(体調がどんなに悪くても何か食べないと、衰弱・脱水症状を起こして更に病状が悪化します)、エアコンの効いた快適な部屋で夕方6時頃から再び眠り続けました。このホテルはメイン通りから離れているので、騒音もほとんど聞こえず静かな環境です。ここに来て中級ホテルを予約しておいたというのは、まさに私の豊富な旅の”経験”と”勘”が冴えたと言っても過言ではないでしょう。
 次の日はコロンボへの移動日でしたが、完全でないまでも、体調は劇的に回復しました。(元々私は、ほとんど風邪等の病気にかからないので、免疫力はかなり高いようです。そうは言っても、近年50歳に近づき、若き頃には周囲から超人とまでもてはやされた私の体力も、どんどん落ちる傾向にあります。)


スリランカ旅行「イスルムニヤ精舎」 (入場料200Rs) アヌラーダプラは全体的に観光客が少なめでしたが、この日は修学旅行のような学校の団体参拝客でにぎわっていました。

スリランカ旅行「ホテル・シャリニ」 (一泊部屋代3500Rs、朝食500Rs、エアコン・ホットシャワー・トイレ付)



 明日のアヌラーダプラからコロンボへの列車の旅のお話は、また次回にいたしましょう・・・。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁



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後藤 仁(GOTO JIN)

Author:後藤 仁(GOTO JIN)
 ~後藤 仁 公式ブログ1~
日本画家・絵本画家 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

  〔後藤 仁 略歴〕
1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校美術科で日本画を始める。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、後藤純男先生(恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。卒業以降は日本画家として活動し、中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は絵本の原画制作に力を入れる。絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞等への出演・掲載も多い。東京造形大学・絵本講師。金唐革紙保存会 主宰。日本児童出版美術家連盟(童美連)(太田大八先生、赤羽末吉先生、いわさきちひろ先生らが創設)会員・理事。絵本学会(太田大八先生らが創設、現会長:松本 猛先生)会員。日本中国文化交流協会(井上 靖先生らが創設)会員。この本だいすきの会(代表:小松崎 進先生)会員。千葉県松戸市在住。

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