2016-11-27

最近の行事「太田大八さんをしのぶ会」、「赤羽末吉 中国とモンゴルの大地」「円山応挙」展鑑賞他

 最近、妙に絵本関係の行事が重なり、私のアトリエの訪問客も多くて忙しいですね。最近の主な出来事を、この機会にまとめてみましょうか。

 2016年9月19日は「長野ヒデ子絵本原画展」(児童書店ハックルベリーブックス、柏市)があり絵本作家・長野ヒデ子さんのトーク・サイン会に客として参加。長野さんの講演風景をSM号スケッチブックに軽くスケッチしてみました。長野さんには、私が初絵本を出版した後の3年前位から、黒井 健さん、浜田桂子さん、小泉るみ子さんらと共にとてもお世話になっております。その前は長く日本画家・純粋美術作家、美術誌・画廊・百貨店関係者等との交流が主体で、絵本作家・児童書出版社との接点はほとんどありませんでした。ちなみに私の日本児童出版美術家連盟(童美連)の入会ご推薦者は、黒井 健さんと浜田桂子さんです。
 25日には、同書店で長野ヒデ子さんとNHKディレクターの岩田真治さんのギャラリートークがありました。岩田真治さんは、とても優れたヒューマンストーリー番組を手掛けられている方です。長野ヒデ子さんの絵本『ひらがなにっき』(解放出版社)と、NHK「ETV特集」の制作エピソードのお話でしたが、日本にも根強く残る差別・偏見についての深い内容に、多くを考えさせられるものでした。長野さん方の世代の絵本には、このような深い人間洞察に基づいた作品が多いのが良い所です。その後、皆さんでお食事をして、夜には映画「ある精肉店のはなし」(纐纈あや 監督、やしほ映画社・ポレポレタイムス社)を鑑賞しました。この映画は差別と食を主なテーマにしたもので、屠畜の衝撃的なシーンから始まる、人間の食意識を考えさせられる深い話でした。私はネパールでいけにえにされて首を切られた水牛と羊を見た事がありますが、人間はこうして他者の命をいただいて生きているという事実を、改めて考える機会になりました。日本画の「膠」も牛の軟骨等から作ります。そう考えると、あらゆる場所で他者の恩恵の元に人は生きているのだという事実を知らされるのです。そしてその大切な仕事を担っている方々への、差別や偏見の愚かさを知る事となるのです。
 今年は、映画「ラサへの歩き方」というフィクションとドキュメンタリーの間の佳作と、「ある精肉店のはなし」というドキュメンタリー映画の秀作を見る事ができて良かったです。

 9月30日、読売・日本テレビ文化センター金町「水彩画教室」講師の仕事を終え(気が付けば、柏の「日本画・美人画教室」と共にすでに10年間も教えています)、銀座の画廊・創英ギャラリー「7ベクトルの起点として」を拝見。美術予備校(立川美術学院)・東京藝術大学時代からの古い悪友の中村寿生と、文星芸術大学の教授・准教授たちのグループ展です。寿生(としお/あだ名のようにそう呼んでいます)は現代美術の村上 隆さんの後継者として、今頃世界を股にかけて大活躍しているかと思いきや、案外こじんまりと地方私立美大准教授・講師などに納まって、取手市で田んぼを作ったりしながら田舎暮らし風を謳歌しているが、まだまだこれからやってくれる器の人間であると期待しています。
 
 10月2日は「松戸まつり」を少し見て、松戸文化ホールのブラジル人作家のラウラ・カルバーリョさんの「ギャラリートーク・ワークショップ」に参加。たまたま前日、文化ホールの「松戸市小中学生観光絵画展」を見た後に、イベント準備中のラウラ・カルバーリョさんに出会い、これもご縁と出向いたのです。ブラジルの色と日本の松戸の色との違いについてのトークは、外国の方ならではの視点が垣間見えて、面白かったです。
 
 10月14日は、再び「長野ヒデ子個展」(Pinpoint Gallery、南青山)におじゃまし、長野ヒデ子さんとスリランカ旅行のお話等をしました。長野さんが中国の方にもらったという「冬虫夏草」を2匹いただいたので、家でスケッチした後、薬膳スープにして食べました。モンゴルの超堅いチーズもいただきましたが、生では堅すぎてなかなか食べれないので、焦げるほど焼いてから少しずつ食べました。

 10月31日には、日本著作者団体協議会(著団協)の研究会に参加しました。「著団協」というのは絵画・絵本・デザイン・文学・作詩・映画・演劇・写真・マンガ等の日本を代表する著作者団体21団体が共同開催する集会で、各団体の理事や部長クラスの方々が参加します。日本児童出版美術家連盟(童美連)からは、きたやまようこ さんが今まで務めて来られた役割を、力不足なのですが私が引き継いでほしいという事で、1年間、きたやま さんに付いて行って学びます。今日は、きたやま さんの都合が合わずに、しばはら・ち さんと一緒に参加しました。AI(人工知能)による文学作品制作の問題について、「日経 星新一賞」の選考委員もされたという日本児童文学者協会の東野 司さんが講義されましたが、とても面白い内容で、今後も創作者が注視していかなければいけない議題でした。
 
 11月1日、再び絵本作家・長野ヒデ子さんの講演会「かぞくと楽しむ絵本と紙芝居」が、松戸市民劇場ホールで開催されたので聴きに行きました。「子供の目線になるとは、人と人として子供に対等に向き合う事だ・・・」とおっしゃられた長野さんのお言葉が心に響きました。面白い中に深みのある軽妙な語り口は、私も学ぶ点が多々あります。
 
 11月8日は、日本児童出版美術家連盟(童美連)の会報誌「dobiren」No,45・2017年号の「も~っとあやしいアトリエ探検隊」の取材で、童美連会報部のタカタ カヲリ さんと福田紀子さんとすみもと ななみ さんが私のアトリエに来られて、日本画・絵本原画や多くの画材・資料を見ていただきました。掲載されるアトリエの見取り図は私が描きましたが、はたして良い記事になるでしょうか。「dobiren」は年に一冊の発行で、貴重な絵本作家の情報が満載された面白い冊子ですが、童美連会員しか見れないのは残念です・・・、つまり、童美連に入会すると見れるという事ですね。来たれ絵本作家、来たれ児童書イラストレーター!!

童美連 アトリエ探検隊日本児童出版美術家連盟(童美連)会報部・アトリエ探検隊のタカタ カヲリ さんと福田紀子さんとすみもと ななみ さん。後ろは私の日本画作品。

 11月10日には、「新作絵本」の打合せで某老舗児童書出版社の編集者2名がアトリエに見えられました。出版社からの発表があるまで詳しくは言えないのですが、長い伝統がある絵本シリーズの来年度版の原画制作です。これから半年は制作が忙しくなりそうですが、おいおい経過をお知らせいたします。
 
 11月15日は午前中、デンマークのコペンハーゲンから来日された、IT University of Copenhagen 准教授の安岡美佳先生と、コペンハーゲン市の絵画・インテリア修復師のアナ・シモンセンさんが、私のアトリエに見えられました。今回の来日目的はデンマークの建築物から「金唐革紙 きんからかわし/手製高級壁紙」らしきものが発見され、その由来を調べられているそうです。金唐革紙製作の第一人者としても知られている私に、手掛かりを聴きたいという事で、3時間近く金唐革紙の資料解説をしました。
 その後、都心に出て、日本児童出版美術家連盟(童美連)の理事会に出席し、先日の日本著作者団体協議会(著団協)研究会の内容説明をしました。
 その後、童美連の創設者であり日本の絵本・児童書界に多大な功績を残され、先日、亡くなられた、太田大八さんを追悼する「太田大八さんをしのぶ会」が太田さん行きつけの蕎麦屋で開催され、童美連のベテランの方々30名位と出版社の方も何名か見えられました。出席者の中では私が一番若い方です。席の右には小泉るみ子さん、左に黒川みつひろ さん、正面に黒井 健さんという、すごい並びでしたが和気あいあいと話がはずみました。先日このブログにも書いた、黒井さんの絵本作品と私の絵本作品『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)「ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定されていたという逸話もこの時に話しました。童美連、現理事長の藤本四郎さんからは、「次の理事長は誰々(詳しくは言えませんが)にお願いし、次は誰々がいて、さらにその先には誰々と後藤さんがいるから心配しなくてもいい・・・。」などという酒の席とは言えご冗談が過ぎるお話も飛び出しましたが、童美連での役割も重くなる中、絵本業界の更なる発展の為にもますます責任感を持って行動しなければならないと思うようになって来ました。ただ、自分の制作と、来年からの東京造形大学絵本講師と、童美連の役目等とのバランスを取っていくのが、なおさら大変になって来そうですね・・・。
 その後、黒井 健さん、矢玉四郎さん他、ベテランの方数名に混ざって久しぶりのカラオケをしました。太田大八さんをしのびながらも、しんみりする事なく、お酒と若い作家との交流が好きだったという太田さんをしのぶ会にふさわしく、矢玉さんの尺八演奏等も飛び出しながら、面白い先輩方のお話と歌声に笑いが絶えない集まりとなりました。お別れに黒井さんと固い握手をかわし、家に着いた時は夜の12時をまわり、一日中、まるで政府要人のような過密スケジュールでした・・・。

安岡美佳先生、アナ・シモンセン修復師IT University of Copenhagen 准教授の安岡美佳先生と、コペンハーゲン市の絵画・インテリア修復師のアナ・シモンセンさん。ご両人の手に持たれているのが、私が中心となり復元製作した「金唐革紙」の断片。私は作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)を持っています。

 11月25日は朝から、ちひろ美術館・東京の「赤羽末吉 中国とモンゴルの大地」展を見に行きました。ちひろ美術館の常任顧問で絵本学会会長でもあり、いわさきちひろ さんのご子息の松本 猛さんには、私も所属する「絵本学会」の集会で何度かご挨拶した事があります。赤羽末吉さんは いわさきちひろ さんと並んで、私が最も尊敬する日本の絵本作家です。『スーホの白い馬』『あかりの花』(福音館書店)『王さまと九人のきょうだい』(岩波書店)等の名作絵本の原画もあって感動。私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(君島久子 文、後藤 仁 絵/岩波書店)の原話が載っている民話集『白いりゅう黒いりゅう』(君島久子 訳、赤羽末吉 挿絵/岩波書店)の原画もありました。この「犬になった王子」は、宮崎 駿さんの絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも有名で、「シュナの旅」は後にスタジオジブリのアニメ映画「ゲド戦記」の原案にもなりました。君島久子先生からは「シュナの旅」の制作時に宮崎 駿さんから直接ご連絡があった逸話や、往年の赤羽末吉さんや太田大八さんのお話を度々伺っており、お三方とのご縁を感じずにはいられません。赤羽さんの中国でのスケッチや写真も展示されており、この展覧会は必見です。
〔補足説明:中国民話研究の第一人者の君島久子先生は、赤羽末吉さんと『王さまと九人のきょうだい』(岩波書店)『あかりの花』(福音館書店)等、太田大八さんと『チベットのものいう鳥』『月からきたトウヤーヤ』(岩波書店)等、村山知義さんと『しんせつなともだち』(福音館書店)、初山 滋さんと『たなばた』(福音館書店)、丸木 俊さんと『ふえをふく岩』(ポプラ社)等、小野かおるさんと『天女の里がえり』(岩波書店)等々・・・、日本絵本史を彩る絵本画家との名コンビにて多くの名作絵本・挿絵本を書かれて来られた絵本界のレジェンドです。そして君島久子先生との最新のコンビが私、後藤 仁という事になるのです。〕
 その後、根津美術館の「円山応挙」展を拝見。円山応挙は伊藤若冲、長谷川等伯と並んで、私が高校生の頃から最も尊崇する桃山時代~江戸時代の絵師です。近年は三者の人気が沸騰し、かつてはゆっくり鑑賞できた根津美術館でも今は人だかりでした。しかし、やはり応挙の筆使いは神妙で、国宝「雪松図屏風」重要文化財「藤花図屏風」「牡丹孔雀図」等の花鳥画の他、「西施浣紗図」「西王母龍虎図」等の美人画も絶品です。今ちょうど根津美術館の庭園は、秋の紅葉に彩られていました。
 その後、日本児童出版美術家連盟(童美連)の「第7回 著作権勉強会2016 ─ デジタル絵本での契約書体験談」を恐竜絵本作家・黒川みつひろ さんの講義で開催しました。絵本界の最先端の状況を詳しく知る事ができて良かったです。後はいつもの店で一杯・・・。お別れに黒川さんと固い握手をかわし、久しぶりの美術館鑑賞もできて充実した一日でした。

ちひろ美術館・東京ちひろ美術館・東京

根津美術館 庭園根津美術館 庭園


 その他にも、NHK文化センター(NHKカルチャー)、読売・日本テレビ文化センター(よみうりカルチャー)、コープみらいカルチャーの日本画・絵画講師や、日本児童出版美術家連盟(童美連)の理事会、著作権勉強会(月1回)、著作権部・事業部部会への参加等があり、その合間をぬって自己の作品制作を行っていくというのですから、今でも十分大変なのです。
 来年は更に、八王子の東京造形大学まで毎週1回、往復5時間余りの通勤時間をかけて絵本講義(講義時間は約3時間)に行かなければならない予定で、童美連の理事へのご推薦などという噂も流れており、某児童書出版社の新作絵本の本画制作、福音館書店「こどものとも」新作絵本制作の進展等も重なって多忙を極める事でしょう。日本画オリジナル作品の制作も大切です。しかし、他者に必要とされているという事実は誠に幸せな事でもあり、気合も入るというものです。一層気持ちを引き締めながらも、ただ一つ一つを丹念に粛々とこなしていくだけです。

 日本画家・絵本画家 後藤 仁





犬になった王子――チベットの民話

犬になった王子――チベットの民話 (2013/11/16)


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後藤 仁(GOTO JIN)

Author:後藤 仁(GOTO JIN)
 ~後藤 仁 公式ブログ1~
日本画家・絵本画家 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

  〔後藤 仁 略歴〕
1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校美術科で日本画を始める。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、後藤純男先生(恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。卒業以降は日本画家として活動し、中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は絵本の原画制作に力を入れる。絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞等への出演・掲載も多い。東京造形大学・絵本講師。金唐革紙保存会 主宰。日本児童出版美術家連盟(童美連)(太田大八先生、赤羽末吉先生、いわさきちひろ先生らが創設)会員・理事。絵本学会(太田大八先生らが創設、現会長:松本 猛先生)会員。日本中国文化交流協会(井上 靖先生らが創設)会員。この本だいすきの会(代表:小松崎 進先生)会員。千葉県松戸市在住。

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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