2016-11-03

金唐革紙・金唐紙の著作権は誰にあるのか?


江戸東京博実演1998.10.「江戸東京自由大学 金唐革紙講座」江戸東京博物館(1998年10月4日) 後藤 仁 © GOTO JIN

移情閣彩色1移情閣 試作品手彩色(1999年冬) 後藤 仁 © GOTO JIN

旧岩崎邸彩色1旧岩崎邸 シルクスクリーン彩色(2001年7月)後藤 仁 © GOTO JIN

紙博実演「洋館を彩った金唐革紙展」紙の博物館 製作実演会(2003年4月6日) 後藤 仁 © GOTO JIN

旧岩崎邸実演1「旧岩崎邸の華そのデザイン展」旧岩崎邸庭園 製作実演会(2003年11月15日) 後藤 仁 © GOTO JIN


 私は日本画制作のかたわら、大学3年生の時から約12年間「金唐革紙/きんからかわし(現在は金唐紙/きんからかみ という場合もある)」という手製の高級壁紙の復元製作をしていました。それだけ”絵”だけで食べて行くのは、今の時代は至難の業なのです。国指定重要文化財の入船山記念館(呉市)、孫文記念館・移情閣(神戸市)、旧岩崎邸庭園(台東区)等の全ての金唐革紙を手掛けています。 私はその製作プロジェクトの中心的な役割を果たし、昭和後期以降の日本史上で最も多くの量の金唐革紙を実際に製作しました。それにもかかわらず、現在でも多くの施設では金唐革紙製作は一人の研究所経営者が行ったとされ、その当時の経営者のみが「国選定保存技術保持者」「旭日双光章 受章」等という恩恵に浴しています。
 私はそのような名誉や補助金・売り上げ金がほしいのではなく、まずは各施設で正確な製作者を明示していただき、文化庁・東京都・兵庫県・呉市・紙の博物館等の関係機関もその事を認識していただきたいだけなのです。

 私が金唐革紙の研究所を離れた大きな理由は3つあります。まずは、本業の日本画の制作に専念したかった事。2つめは、実質的にはほとんど私達若い者2~6名位が金唐革紙製作をしていたにもかかわらず、外部には経営者が一人で全てを製作しているという形で喧伝されていたという不条理。3つめは、経理・運営を一人で手掛けていた経営者が、「研究所発足当時から長年不正経理を継続しており、巨額の脱税をしている。」という経営上の法的不備の告白をした事によります。
 現在でも、金唐革紙の現存する各施設では、金唐革紙の製作者は研究所経営者のただ一人のみとされていますが、一人で出来る規模の仕事ではありません。当時、研究所の経営者は実質的製作にはほとんど参加せずに、企画・経理等の研究所経営のみを行っていました。 「旧岩崎邸庭園サービスセンター」や、その監督所の「東京都公園協会」、「孫文記念館・移情閣」、「入船山記念館」、「紙の博物館」等のいずれも私達数名が実質的な製作をした事を把握していますが、現在の日本では経営者(出資者)と発注者の権限が強く、実際苦労して製作にたずさわった人の権利はまだまだ低いのが現状です。

 私は近年、日本児童出版美術家連盟(童美連)の著作権部で著作権法を学んでおり、美術・文学・音楽・写真・映画・マンガ等の多くの創作者団体で構成される日本著作者団体協議会(著団協)の研究会担当者も任される事になり、著作権の事がだんだん理解できて来ました。今までは制作者としての心情・道義性からのみ語って来たのですが、著作権の規定によると、やはり私の考え方の方が法律的にも正しい事が立証されそうです。
 ちなみに私が加わっていた金唐革紙の研究所は法人登録等は当然されておらず、法人著作(職務著作)にはあたらず、創作グループでの集団製作(共同著作)というカテゴリーに属します。
 著作権法 第2条1項12号、第64条、第65条では、「2人以上の者が共同して創作した著作物は共同著作物となり、その著作権は共有となり共有者はそれぞれの持ち分を有する。」と規定されており、文部科学省 文化審議会 著作権分科会報告書 第1章第2節 共有著作権に係る制度の整備について においては、「『共同著作』が成立するためには、2人以上の者が『共同して創作した』といえる必要があり、各人の寄与が創作性のあるものでなければならない。例えば、単なる著作者の手足として参画している補助者や、企画を立てただけで、実際の創作には何ら関与していないような者は共同著作者とはならない。」と解説されています。つまり、中心的に創作的に金唐革紙製作にあたった私や数人の若者達は共同著作者と言え、後半時期になるほど企画のみをしてほとんど製作に加わっていない経営者の方がより共同著作者としての資格が少ないとも解釈できるのです


 ●文部科学省公式ホームページ ─ 文化審議会 著作権分科会報告書 第1章第2節 共有著作権に係る制度の整備について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/07020702/004.htm

 近い将来、それぞれの施設で、製作者の名前を全て正確に記載していただける日が来る事を願っています。その様な公平な日が来る事が、製作者側の唯一の望みです。このブログを見られた皆様にも、ご支援・ご教導の程よろしくお願い申し上げます。  
  日本画家・絵本画家、金唐革紙保存会  後藤 仁

(※最近、かなり多くの私の支援者やファンの方が、「旧岩崎邸庭園」「入船山記念館」等の販売コーナーの金唐革紙しおりや金唐革紙の本を、私の為になると思われて購入されている様です。お気持ちは誠に有難いのですが、現在私は金唐革紙の研究所を完全に離れており、購入された収益は全て研究所の経営者のものとなっています。もし、私の為のご購入でしたら、金唐革紙グッズではなく、私の『絵本』作品などをお求め下さいましたら有難いですので、よろしくお願い申し上げます。)
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プロフィール

後藤 仁(GOTO JIN)

Author:後藤 仁(GOTO JIN)
 ~後藤 仁 公式ブログ1~
日本画家・絵本画家 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

  〔後藤 仁 略歴〕
1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校美術科で日本画を始める。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、後藤純男先生(恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。卒業以降は日本画家として活動し、中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は絵本の原画制作に力を入れる。
○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞等への出演・掲載も多い。
○東京藝術大学・デザイン科非常勤講師。東京造形大学・絵本講師。金唐革紙保存会 主宰。日本児童出版美術家連盟(童美連)(太田大八先生、赤羽末吉先生、いわさきちひろ先生らが創設)会員・理事。絵本学会(太田大八先生らが創設、現会長:松本 猛先生)会員。日本中国文化交流協会(井上 靖先生らが創設)会員。この本だいすきの会(代表:小松崎 進先生)会員。千葉県松戸市在住。

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