2015-07-15
私の伯父、からくり人形師 後藤大秀
私が物心がついた頃には、夏休み・冬休み毎に大垣の伯父の家へ伺っていました。私が中学生になると美術に対する関心も増してきて、当時、伯父が始めた「能面打ち」の話を聞くのが楽しみになりました。私が美術高校(大阪市立工芸高校 美術科)に行く頃には、伯父は宮大工と能面の高い技術を評価され、「からくり人形」の復元依頼を受ける様になり、私にとって未知の世界の話に聞き入っていました。
中学・高校の頃、一時は私も能面打ち・からくり人形師になりたいと考えた時期もありましたが、最初の目標通り「絵画」の道を進む事になりました。しかし伯父の創作に対する熱意や高い技術力は、私に大きな影響を与えている事でしょう。また、祖父は指物大工(家具職人)で伯父は からくり人形師という職人家系に生まれ(次男の父は普通のサラリーマンになりましたが)、私も創作を極めて好み手先が異様に器用だという所はやはり遺伝なのでしょう。(ちなみに私の兄は現役の歯科技工士で、母はかつて編み物の先生をしていました。皆、手先は器用です。)
昨年、常滑市大野橋詰町の「尾張大野祭」紅葉車(こうようしゃ)の からくり人形「逆立ち唐子」「采振り童子」復元制作が完了したという事です。まだまだ若輩者の私も、伯父を見習って創作に一生を捧げたいと、改めて思いを強くしました。
日本画家・絵本画家 後藤 仁



●私の公式ホームページ「後藤 仁(GOTO JIN)のアトリエ」(からくり人形師 後藤大秀)にも、からくり人形の画像を多数掲載しています。
http://gotojin.web.fc2.com/gotodaisyuu.html
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【からくり人形師 後藤大秀】
後藤 大秀(ごとう だいしゅう、1929年~ 、本名は後藤 秀美 )は、名古屋を中心に活躍する著名な「からくり人形師」であり、後藤 仁の伯父でもある。
〔概要〕
現在、日本で本格的な「からくり人形師」として活動しているのは数名しかおらず、後藤大秀は日本を代表するからくり人形師の一人である。 全国的にも有名な大垣祭、大津祭といった祭りの、「山車からくり(だしからくり)」の完全復元や修復を多く手がける。(この場合の復元とは、昔の人形を基に全く同じ姿形の人形を新しく制作する事。修復とは、昔の人形の破損した箇所だけを作り直す事。)
なかでも、大垣祭の相生山「神主友成」復元制作では、昔の人形は過去に紛失していた為、古い写真一枚と古老の証言のみを基に制作をしたので、この場合はほぼ完全創作と言える。
「からくり人形」は頭・首・手・足・胴・胴串等から出来ており、頭・首・手・足には木曽檜、胴には桜、軸は樫、ピンは竹、滑車類はツゲといった木材を、バネには鯨のヒゲを使用する。昔と変わらぬ道具や材料を使用して、人形一体を制作するのに一年はかかる。
後藤大秀の作品は、「能面打ち」修行でつちかった髪や目の繊細な線描きと、深い色合いの彩色や、「宮大工」時代につちかった高度な木工技術による、複雑なからくり仕掛けが特長である。
〔略歴〕
• 1929年 愛知県一宮市に生まれる。〔本名、秀美(ひでみ)。父は指物大工である。甥は日本画家の後藤 仁。〕その後、岐阜県大垣市に移る。
• 1948年 工匠の小寺浅之助に堂宮建築(宮大工)を学び、のち数寄屋建築(茶室)を手がける。
• 1980年 能面打ち師の東 安春に師事し、能面打ち修行をする。
• 1984年より、「からくり人形」復元制作を始める。名古屋市 戸田まつりの四之割「宙吊り小唐子」「肩車大唐子」「采振り童子(ざいふりどうじ)」復元制作。
• 1988年 大垣市市展賞受賞。
• 1991年より、名古屋市筒井町 天王祭の神皇車(じんこうしゃ)「神功皇后(じんぐうこうごう)」「武内宿禰(たけのうちのすくね)」「面かぶり巫女」「采振り童子」復元制作。
• 1992年 大垣市東地区センター能面の会 講師。
• 1994年より、大垣祭の相生山「神主友成」「住吉明神」「尉」「姥」復元制作。
• 1998年 大垣市教育功労賞受賞。
• 1999年 大垣市美術家協会理事。第14回国民文化祭(岐阜県高山市)で、からくり人形の制作実演。
• 2000年 大垣市市展審査員。
• 2001年 大津祭の龍門滝山「鯉」復元制作。
• 2003年より、名古屋市 広井神明社祭の二福神車(にふくじんしゃ)「恵比寿人形」「大黒人形」「采振り童子」復元制作。
• 2005年 岐阜県神戸町町展 審査員。
• 2007年 大垣祭り出軕運営委員会 功労賞受賞。「後藤大秀 からくり人形・能面展」(名古屋市博物館)
• 2014年 常滑市大野橋詰町 尾張大野祭の紅葉車(こうようしゃ)「逆立ち唐子」「采振り童子」復元制作。
〔その他〕
• 後藤大秀が修復した「からくり人形」が使用されている山車。
大垣祭の菅原山、榊山、愛宕山
大津祭の郭巨山
名古屋市 戸田まつりの一之割、三之割、五之割
羽島市 竹鼻まつりの福江町・上町の山車
大垣市 綾野祭の猩々山
半田市 亀崎潮干祭の東組宮本車
津島市 津島秋祭の麩屋町車、池町車 等
• 「名古屋まつり」には、筒井町 天王祭の神皇車と広井神明社祭の二福神車が登場する。
• 後藤大秀の「からくり人形作品」は、名古屋市博物館、神皇車保存会、産業技術記念館(名古屋市)等に収蔵されている。
〔参考文献〕
• 千田靖子「図説からくり人形の世界」2005年11月1日 法政大学出版局
• 「第14回国民文化祭・ぎふ99 からくり文化フェスティバル─からくり今むかし─」1999年10月 第14回国民文化祭岐阜県実行委員会
• 「月刊西美濃わが街」1985年10月1日号 p.6(後藤秀美特集) 月刊西美濃わが街社
• 「月刊西美濃わが街」1986年3月1日号 p.56-59(後藤秀美特集) 月刊西美濃わが街社
• 「岐阜新聞」1996年8月23日朝刊(美濃・飛騨のワザ人たち、後藤大秀特集)
• 特別展「からくり─見る・作る・遊ぶ─」図録 2007年7月28日 名古屋市博物館
• 「後藤大秀能面展(名古屋市博物館)」パンフレット 2007年8月 後藤大秀後援会 他
〔外部リンク先〕
尾張の山車館 : 筒井町天王祭 神皇車 からくり人形1 (尾張の山車まつり内のページ)
http://dashi-matsuri.com/dashikan/owari/tutui/jinkou_k.htm
尾張の山車館 : 筒井町天王祭 神皇車 からくり人形2 (尾張の山車まつり内のページ)
http://dashi-matsuri.com/dashikan/owari/tutui/jinkou_k2.htm
尾張の山車館 : 花車神明社祭 二福神車 からくり人形 (尾張の山車まつり内のページ)
http://dashi-matsuri.com/dashikan/owari/hiroi/nifu_k.htm
張州雑記 : 花車神明社祭 二福神車 からくり人形 (尾張の山車まつり内のページ)
http://dashi-matsuri.com/main/topics/tp2005/051002.htm
まつり紀行2014 : 尾張大野まつり 紅葉車 からくり人形 (尾張の山車まつり内のページ)
http://kikou.dashi-matsuri.com/sk14/140330.htm
大野谷文化圏のブログ 「からくり人形を修理する後藤氏と人形の仕様について」
http://ameblo.jp/ohnodani/entry-11579167922.html
大野谷文化圏のブログ 「25年度紅葉車からくり人形継承事業報告」
http://ameblo.jp/ohnodani/entry-11821019939.html
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