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2020-07-21

中国文化への憧憬、そして、絵本「青蛙緑馬」の出版へ

 私は小さい頃から、中国文化に対して、極めて高い関心と憧憬を抱いてきました。中国の政治経済とは関係なく、その長大深遠な文化・歴史そのものに関心が高いのです。近年の中国(中華人民共和国)の急激な経済発展を受け、にわかに中国経済に注目する人が激増し、最近も中国で活動しようとする経済人・文化人にも度々出くわしましたが、その多くは中国文化への本質的な関心・知識は乏しく、ただ時流に乗ろうとする、金儲け第一主義の人々が大半でした。私は、そのような付け焼き刃的な発想ではなく、長きに渡る中国文化への執心があるのです。
 もし私に前世というものがあるのならば、きっと、中国大陸のどこかに住んでいたのではないかと思うほどです。そうであるなら、中国中南部から西域・チベット辺りの少数民族の文化に関心が高く、強い郷愁を感じたりするので、きっと、その辺りに住んでいたのではなかろうかと・・・。ただ、中国やアジアの旅をする中で、私は度々、中国人に間違われるのですが、見た目は完全に漢民族に似ているようです・・・。

 
 私が中国に関心を持つようになった理由は、このような遺伝的特質が原点にあるように思えますが、実際の生い立ち上では、1980年(12歳・小学校6年生頃)に始まったテレビ番組、『NHK特集 シルクロード -絲綢之路(しちゅうのみち)-』に感化された事が大きいと思います。また当時、シルクロードをテーマとした、喜多郎のシンセサイザー音楽を好んで聴いていました。
 中学校2年生頃には、イラストレーター・画家を目指すようになり、日本画家・東山魁夷先生の唐招提寺御影堂障壁画や平山郁夫先生のシルクロードシリーズにも大いに影響を受けました。私が私淑する、宮崎 駿さんのアニメ作品では、「太陽の王子ホルスの大冒険」「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「未来少年コナン」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」等、多くの作品から多大な影響を受けましたが、それらには、あまり東洋的な作品はありません。しかし、1984年(15歳・高校1年生の初め)に読んだ、「シュナの旅」(徳間文庫)には、西域シルクロードの雰囲気が色濃く漂っています。「シュナの旅」はこれ以降、私の座右の書の一つとして最も好きな宮崎作品となりましたが、この作品の原話は、私が後に絵本化したチベット民話「犬になった王子」なのです。(ちなみに「シュナの旅」は後に、ジブリアニメ「ゲド戦記」の原案となっています。芸術家・作家同士が互いに他作品からの影響を受けるという、複雑で不思議な相関関係にあるのです。)
 ただ、振り返ってみると、さらに昔、1978年(10歳・小学校4年生頃)に放送された、テレビドラマ「西遊記」を見て、潜在的に、中国文化への興味を持っていたようです。奇想天外なストーリーを単純に面白がる半面、子供ながらも、夏目雅子さんの清廉な美しさに魅了されていました。近年、再放送されたのを見て、そのあまりに中国風な作りこみを再認識したのです。
 私は元々、小学生の頃から、日本の歴史文化に興味を持っており、小学校の卒業アルバムには、「将来、考古学者になりたい」等と書いてあります。特に奈良・平安時代と桃山・江戸時代の和風文化の爛熟期に関心を持っていました。日本文化は、中国、さらには、インドからの文化的影響が強いので、私の中国文化への関心の高まりも、日本伝統文化への興味の延長として、ごく自然な流れなのでした。

 決定的だったのは、中学校2年生頃から好んで聴きだした歌手、さだまさし さんが音楽を担当するテレビ番組、「NHK ニイハオ!中国」(1983年 15歳・中学校3年生頃)を拝見した事でしょう。この頃から、実際に中国を訪れたいという気持ちが強くなってきました。
 こう書いてくると、何やらテレビやアニメや音楽にばかり影響を受けているように見えますが、実際はそうではなく、幼少期には「孫悟空」等の中国童話を読み、中学・高校生頃には、「聊斎志異」「唐詩」等の中国文学や中国関係の書物・図鑑等を多く拝読して、知識を深めていました。
 高校生(大阪市立工芸高等学校 美術科)の頃には、牧谿、徽宗皇帝、仇英 等が描いた中国絵画への造詣も深まり、大学に入ったら、真っ先に中国へ旅しようと、心に決めていました。ところが私が上京し、美術予備校(立川美術学院)に通っていた21歳頃に、とある事件が中国で起こり、その後しばらく、中国に行く事を諦めていました。
 1990年 21歳で、東京藝術大学 美術学部絵画科日本画専攻に入学し、3~4年生には後藤純男先生(西安美術学院〈大学〉名誉教授、日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)の担当を受け、先生の御作品は高校の頃から知っていましたが、改めて、先生の中国を描いた作品からも大いに触発されました。

 中国の国情も安定してきたので、いよいよ中国への旅を希求していたところ、丁度、クラスの友人が中国への旅を計画していると言うので、一緒に行く事にしました。まだ当時は、海外一人旅をした事がなく経験不足でもあり、誰か同伴者が必要だったのです。その初めての中国の旅は、1995年(27歳・大学4年生)、「中国写生旅行 15日間(北京・西安)」です(年代が合わないようですが、私は当時、藝大や日本画界の体質への失望感等が理由で、2年間学校を離れ、留年したのです)。
 この時には、本当は敦煌まで足を伸ばしたかったのですが、中国内で飛行機の便が取れずに、西安行きまでに留まりました。初めて中国の本当の文化に触れ、大感動でした。西安辺りでは、まだ人民服を着た老人がたくさん見られ、昼間から中国将棋(シャンチー/象棋)をしている のどかな光景に、誠に古き良き中国を見ました。故宮博物院・天壇・万里の長城・秦の始皇帝陵・華清池・乾陵・永泰公主墓・大雁塔・小雁塔・興慶宮公園 等の見所が沢山ありましたが、話し出すときりがないので、今回はこれ位に留めておきます。

中国(北京・西安)の旅「中国(北京・西安)の旅」 〈1995年8月20日~9月3日〉 西安・興慶宮公園にて、玄宗皇帝と楊貴妃の悲話で有名!

中国(北京・西安)の旅「中国(北京・西安)の旅」 北京・故宮博物院 25年前ともなれば、中国人のファッションも今とは違う~

中国(北京・西安)の旅「中国(北京・西安)の旅」 西安・宿の近くの夜市にて、毎日通い仲良くなった 夜市で働く青年たち。今は元気でいるのだろうか・・・。


 その後、2008年 39歳 「中国写生旅行 18日間」─貴州省(上海、貴陽、凱裏-ミャオ族・トン族村-桂林、北京/絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』取材)、2012年 43歳 「中国写生旅行 19日間」─チベット・四川省(西寧、ラサ、ギャンツェ、シガツェ、ツェタン、成都-四姑娘山/絵本『犬になった王子 チベットの民話』取材)、2018年 49歳 「台湾写生旅行 22日間」(台北、台中、日月潭、嘉義、台南、高雄、霧台、台東、花蓮、平溪線、九份、烏来)、2018年 50歳 「中国写生旅行 8日間」(上海、西塘)─日中平和条約40周年記念 日中藝術展 - 一衣帯水-(雲間美術館,中国上海)日本画ワークショップ(在上海日本国総領事館)、2019年 50歳 「煙台職業学院書画芸術研究院 成立大会、研討・展覧会」(中国山東省煙台市) 3日間 、2019年 51歳 「中国写生旅行 12日間」(南京〔絵本シンポジウム〕、揚州、西寧、敦煌莫高窟、上海/絵本『青蛙緑馬』他、絵本・日本画取材を兼ねる)と、旅や展覧会・シンポジウム等を重ねてきました。地域で言うと、北京、上海、陝西省(西安)、貴州省、広西チワン族自治区、チベット自治区、青海省(西寧)、四川省、浙江省(西塘)、山東省、江蘇省(南京・揚州)、甘粛省(敦煌莫高窟)、台湾、とかなり広範囲の中華文化圏に渡ります。
 中国地域以外の海外では、インド、ネパール、タイ王国、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、スリランカ、イタリア、バチカン市国の計13か国・地域を写生旅行しています。ちなみに日本国内では、47都道府県の全てを回っています。しかし、まだまだ大した経験数とは言えず、本当はもっと多くの旅をしたいところですが、時間はあっても貧乏画家故、金銭的な問題が一番理由で限界があるのです・・・。

絵本「ながいかみのむすめチャンファメイ」絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』 (福音館書店こどものとも)

●福音館書店 公式サイト 「ながいかみのむすめチャンファメイ」
 https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=2519

○Amazon 「ながいかみのむすめチャンファメイ」
 https://www.amazon.co.jp/%E3%81%93%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%82%82-2013%E5%B9%B4-03%E6%9C%88%E5%8F%B7-%E9%9B%91%E8%AA%8C/dp/B00BD52ZKO/

絵本『犬になった王子(チベットの民話)』 表紙絵本『犬になった王子 チベットの民話』 (岩波書店)

●岩波書店 公式サイト 「犬になった王子 チベットの民話」
 https://www.iwanami.co.jp/book/b254895.html

○Amazon 「犬になった王子 チベットの民話」
 https://www.amazon.co.jp/%E7%8A%AC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%8E%8B%E5%AD%90%E2%80%95%E2%80%95%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B0%91%E8%A9%B1-%E5%90%9B%E5%B3%B6-%E4%B9%85%E5%AD%90/dp/4001112426/


 そのような熱き想いを抱きながら、この10数年、中国をテーマとした絵本・日本画の制作や、中国での「グループ展・シンポジウム」の開催を経る内に、元福音館書店編集長で、現在、中国の児童書出版社編集長を務めている絵本編集者・文筆家の唐 亜明(タン ヤミン)さんと出会いました。唐さんは、日本を代表する絵本出版社の福音館書店で、優れた中国民話絵本 等を多数手掛けておられ、加古里子さんの文章による「万里の長城」等の絵本の編集にもたずさわられたと記憶しています。
 唐さんといつか良い仕事をしてみたいなという思いは、初絵本を手掛けた頃からありました。もう少し早くにお会いしていたら、唐さんの編集で、福音館書店から何冊か絵本を出せていたのかも知れませんが、物事は時と運次第とも言いますので、やむを得ません。私は、今現在、精一杯に絵が描けられさえすれば、本望なのです。
 数年前、その唐さんから、中国での絵本出版の話が舞い込みました。原話は、唐さんが永年、絵本化したかったという、チベットの素晴らしく面白い民話です。私は喜んで、この仕事を受ける事にして、2018~19年の1年位をかけて日本画で丹念に原画を作画しました。
 本来なら、2020年1月には出版予定でしたが、この度の新型コロナウイルスの影響を受け、出版は半年以上も遅れ続けています。しかし、中国の経済が通常の流れを取り戻した頃には、満を持して発売されるものと期待しております。また、順調にいけば、日本での翻訳出版もぼんやりと予定されていますので、気が早いですが、お楽しみにしていて下さい。発売時には、またおいおい、ご案内いたします。 
 一冊目がなかなか発売に至らないですが、さらには、中国向け絵本の”第二弾”も現在、作画中です。こちらの壮大な史劇絵本も乞うご期待、来年頃には刊行予定!?
 さらにさらに、絵本”第三弾”も構想中!!! まっこと厳しき御時世ですが、絵を描きたいという情熱だけは、どこまでも前向きです~~ (^・^)ノ。

もうじき中国にて発売予定!!
 絵本『青蛙緑馬』
 〖中国原創絵本清品系列/浙江少年児童出版社,伝世活字国際文化メディア・小活字、中国〗
  文 唐 亜明/画 後藤 仁

絵本『青蛙緑馬』表紙

 『青蛙緑馬』は、カエルと馬が躍動し、主人公の美男と美女が活躍する、面白くも哀しい、壮大な愛の物語です。
 困難の多い昨今、子供から大人まで、人の”愛”や”生と死”を深く考え・見つめ直す良い機会にもなる、素晴らしい絵本だと思います。中国の少数民族・チベット族の民話。



 日本と中国とは歴史上では、何度となく衝突・対立と和解・協調を繰り返してきました。しかし、それは政治的な側面であって、文化的・経済的には古代より連綿とつながり、お互いに良い作用を与え合ってきました。民族的に考察しても、日本人は元々、中国大陸からの渡来人が大多数だと思います。すなわちアジア、ひいては世界中の人々は、皆、同朋なのです。
 今後も厳しい世界情勢が続く事が予想されますが、どんな時代においても、文化・芸術・美術は国境を越えて一帯であり、将来的にも各国間での良き関係性を築き続けなければいけないのです。それには私達、創作にたずさわる者達の不断の努力というものも不可欠なのです。そして、その芸術・美術を楽しみ愛好する一般大衆の関心・応援無くしては、成し得ない事なのです。
 今後の、日本と中国の文化交流のさらなる発展と、日本文化の真の興隆を、心より願っています。

 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁

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テーマ : 絵本・制作・イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

2020-07-11

或る清貧画家の祈りの断簡3(未来の瞳の為に描く)

 私は制作の合間に時々、フェイスブックやツイッターでつぶやいています。今回は、その主要部分の”まとめ”の続編になります。
 中国向けの新作絵本『青蛙緑馬』(チベット民話/唐 亜明 文、後藤 仁 画/浙江少年児童出版社、伝世活字国際文化メディア・小活字 〈中国〉 )は、残念ながら、新型コロナウイルスの影響で、発売が半年ほども延期されたままです・・・・(絵本の発売準備は整っており、中国の経済状況の回復を待って、発売時期を検討中です)。この物語は、最後こそ悲話の幕引きとなりますが、勇気や希望や愉悦や情愛を感じていただける、・・・人の”生”と”死”を考えさせてくれる、とても良いお話です。まさに今、困難に直面している、中国や日本や世界中の幾多の子ども達に、ぜひ読んでいただきたい、誠に素敵な絵本になると信じています。
 そんな苦しき現状にもかかわらず、中国向け新作絵本制作第二弾は、すでに描き途中です。もう全場面の半分以上は描き進めています・・・。どのような困難な状況に見舞われようと、厳しい時代に突き当たろうと、制作の手をゆるめる事は決してできません。それが将来を担う多くの子ども達・・・、”未来の瞳”を輝かせるものであるのならば、なおさら、私は描かずにはおられないのです。それが、生来の絵描きというものなのです。

 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁

絵本『青蛙緑馬』表紙絵本『青蛙緑馬』(チベット民話/唐 亜明 文、後藤 仁 画/浙江少年児童出版社、伝世活字国際文化メディア・小活字 〈中国〉 )


             *

 2020年5月11日

 今年の「大垣祭り」(ユネスコ無形文化遺産・国重要無形民俗文化財/岐阜県大垣市)は、新型コロナウイルスの影響で、残念ながら中止になりました。
 私の伯父・後藤大秀の「からくり人形」ご披露も、今年はおあずけです・・・。  ( ;∀;)

 これからいよいよ、「大垣祭・布袋軕」天井画(天井絵)制作が、本格始動いたします。来年は無事に、祭りが開催されます事を、心からお祈り致します。

 https://www.city.ogaki.lg.jp/0000002628.html
 https://www.ogakikanko.jp/event/ogakimaturi/


 5月18日

 中国向けの新作絵本制作は、この数日をかけて、「第8場面」の彩色を進めると共に、「第12場面」の下図完成~骨描き~下地塗り~彩色と、2枚を同時進行しています。

 この絵本は史実に基づいた創作物語なので、家具や道具等の多くの小物が出てきます。これらの細部を描くのも大変なのですが、創意工夫のしがいもあり、完成しましたら、絵本の見所の一つともなるでしょう。

 どんなに困難な時代・時節でも、創作の手は決して緩めない。常に、焦らず、弛まず、奢らず(驕らず)・・・の精神で、画道に精進したいと考えています・・・。


 5月27日 

 【ライブドアニュース】宮崎駿監督「シュナの旅」の原話、チベット民話「犬になった王子」の絵本版が出版―日本
 2013年11月1日、チベット民話を題材にした絵本「犬になった王子」(岩波書店)が11月15日に出版される。「犬になった王子」は宮崎駿監督が出版した「シュナの旅」の基となった民話であり、「シュナの旅」は後の映画「ゲド戦記」の原案となっている。・・・・
 古いニュースですが、まだ掲載されていますね~。こんな困難な時代だからこそ、親子で・お孫さんと一緒に読んでいただきたい、壮大な冒険物語絵本です。

 https://news.livedoor.com/article/detail/8217084/


 6月3日

 中国向けの新作絵本制作は、数日をかけて「第9場面」の下図を完成させ、転写~骨描き~胡粉・黄土の下地塗りまで進めました。この場面には、人物が40人以上も登場するので、描くのは実に大変です。「第12場面」もぼちぼち進んでいます。

 この絵本の原話は、中国の古代史話に基づいた創作歴史物語ですので、今までの私の絵本作画よりも、衣装や小道具の描写に凝っています。それだけに、下調べや描くのも一苦労です。しかし、その分、描きがいがあります~。(^o^)

 J:COMで「麗王別姫」~花散る永遠の愛~という壮大・豪勢な中国ドラマをやっており、もちろんCGも多用していますが、衣装や建造物・小道具等の細部まで素敵ですね~。中国の映画やドラマのレベルは、この20年ばかりで、驚くほど飛躍的に向上しました。このドラマの印象は、今回の私の作画絵本にも通じる世界観ですね・・・。景甜(ジン・ティエン)のような、美しい女性像が描けるといいのですが~~♡


 6月9日

 絵本作家・田畑精一さんの訃報が伝えられました・・・。

 2016年4月6日(水)に、童美連で開催された「絵本サロン2016」田畑精一さん、杉浦範茂さんの対談。この時には、とても為になるお話が聴けました。
 私が持参した、絵本『おしいれのぼうけん』を手に・・・。この絵本には、後でサインを入れていただきました。

 その後、私の絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)をお見せした機会には、わざわざご丁寧なお電話をいただき、「髪の毛の描写は大変だったでしょう・・・。」との有難いお言葉をいただきました。
 日本の絵本全盛期の優れた作家が、またお一人去って逝かれます。日本画の世界も絵本の世界も、本当に実力と勢いのあった世代の作家が、どんどん少なくなって寂しい限りです・・・・。
 心よりご冥福をお祈り申し上げます。

童美連 絵本サロン「絵本サロン2016」 田畑精一さん(左)、杉浦範茂さん(右)


 6月17日

 私も齢五十を越え、半世紀の時を想う事も度々である・・・。インドの思想では、五十を越えると「林住期(りんじゅうき)」となる。

 私は遅く27歳で藝大を卒業したが、それは、ほぼ「学生期(がくしょうき)」に当たる。その後、「家住期(かじゅうき)」には、家庭人としては役をなさなかったが、画家としての社会的役割は最低限は果たせたであろうか?

 今の世の中は難問が山積みであるが、そんな時代だから、なおさらに深く想う・・・。画家としても全くと言っていいほど、何も成果は上げられなかったが、それでも何とか画道を続けて来れたのは幸いである。

 これからの「林住期」・・・、儒教で言えば、「知命(天命を知る)」であるが、できるだけ俗世間から離れ、短絡的私利私欲や刹那的損得に惑わされずに、ただ絵師として、超越した世界を生きる事ができるのだろうか・・・。そうありたいものである。

 (追伸: ただ、この「林住期」は、絵描きにとっては最も重要な時期になる。俗世とは少し距離を置きながらも、ひたすら創作に明け暮れる日々にしたいものである・・・・。)


 6月19日

 東宝映画情報「スタジオジブリ」4作品 劇場上映が決定しました!!。

 ジブリアニメ映画「ゲド戦記」の原案の「シュナの旅」(宮崎 駿/徳間文庫)の原話は、チベット民話「犬になった王子」です。私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)も合わせて、ぜひご覧下さい。

絵本『犬になった王子(チベットの民話)』表紙 小絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)

 https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/ghibli2020.html

 https://www.amazon.co.jp/%E7%8A%AC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%8E%8B%E5%AD%90%E2%80%95%E2%80%95%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%AE%E6%B0%91%E8%A9%B1-%E5%90%9B%E5%B3%B6-%E4%B9%85%E5%AD%90/dp/4001112426/


 6月23日

 中国向けの新作絵本制作は、数日をかけて、「第12場面」を完成させました。この場面は、一見、地味目な人物風景なのですが、想像以上に描くのは大変でした。日本画では、同じ人物を何度も描く事すら難しいのですが、様々な文房四宝の描写も思った以上に困難でした。しかし、静謐な満足感がかもし出された、起承転結の内の”転”の締めくくり場面になりました。
 今日はもう少し、「第9場面」を墨線で描き起こそうかと思います。墨線の仕事は、実に疲れます。・・・・

 新型コロナウイルスの影響で、絵画講師の仕事が3ヶ月近く無くなり、当面、絵の販売の計画も無く、中国向けの絵本の発売も半年近くも遅れています・・・。元々微々たる収入は、この3ヶ月近く全くの”0”になりました。きつ過ぎる~。
 日本画はとても画材代が高く、気が遠くなりそうに神経を使う仕事が連綿と続きます~。日本画も絵本も、基本、完成後の後払い方式なので、前回・今回の絵本の制作も、ほぼ2年位、完全タダ働き状態です~~。😭
 ほんの一部の商売上手で調子のいい人を除いて、真面目な絵描きとは、基本、辛過ぎるお仕事なのです。これからの若い人には、到底、お薦めできません。
 ただ、2013年に発売された拙作絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)を、ツイッター等で、「子供の頃好きだった絵本」に挙げていただいているのを見付けたりすると(その人は幼稚園の頃に読んだらしいので、まだせいぜい中学生位の人でしょうが・・・)、もう既に私の作品は、誰かしら多くの若い人々の感性に影響を与え、その人の心に深く刻まれていっているのですね・・・。
 そう考えると、たとえ貧困で飢え死にしようと、作品は生きている訳で、画家冥利に尽きるというものです。ただそれだけで良いのです、何もいらない、ただ描ければそれで良いのです・・・。

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)


 7月3日

 ★私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)が、Internationale Jugendbibliothek Munchen ミュンヘン国際児童図書館【The White Ravens 2014 国際推薦児童図書目録2014】に選定された時の、2015年 巡回展覧会パンフレット「Wanderausstellungsflyer IJB 2015」(19ページ)に、絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)も掲載されていたようです。今頃、気が付きましたね~。

○「Wanderausstellungsflyer IJB 2015」展覧会カタログ 〈PDFデータ〉
 https://www.ijb.de/fileadmin/Daten/Pdfs/Wanderausstellungsflyer_IJB_2015.pdf

 https://www.ijb.de/de/ausstellungen/single/article/the-white-ravens/48.html


 7月5日

 Internationale Jugendbibliothek Munchen ミュンヘン国際児童図書館【The White Ravens 2014 国際推薦児童図書目録2014】
 私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店) Inu ni natta ōji. Chibetto no minwa (The prince who became a dog. A Tibetan folk legend) のページがあります。

 https://whiteravens.ijb.de/book/1286


 7月6日

 スタジオジブリアニメ映画「ゲド戦記」、宮崎 駿の絵物語「シュナの旅」の原案・原作は、チベット民話「犬になった王子」であると、ここでも触れられています。
 私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)も、この機会に合わせて、ぜひご覧下さい。

 https://realsound.jp/movie/2020/07/post-579758.html

 https://www.iwanami.co.jp/book/b254895.html


 7月8日

 中国向けの新作絵本制作は、数日間をかけ、「第9場面」を完成させました。この場面には、30名余りの美人と10名余りの男達が登場しますので、描くのに骨が折れました。この「第9場面」は「第4場面」に対応しているので、背景はほぼ同じに描いてあります。日本画では、全く同じように描く事自体、かなり難しく、デジタルでコピーペーストするようにはいかず、その点でも今回は至難の業でした。
 また、「第10・11場面」の下図にも、着手しました。~

 この絵本作品には、総勢、数百名は人が登場します。私が今まで描いた絵本の中では、最多です。その上、けっこう緻密な描写手法で描いています。そんな意味でも、この作品は私にとって、新たな試みだと言えるのです。
 保守的マンネリズムに陥るのではなく、常に新たな境地を求め続ける・・・、それが、芸術家にとって最も大切な姿勢なのです。言うは易く行うは難し・・・、一生、この困難な道を歩もう・・・、今、厳しい現状にある、多くの子ども達〈未来の瞳〉の為にも、命をかけて描き続けよう・・・・。遥かなる高みを目指して、この道を、ただ歩もう・・・・。


 7月10日

 私はアイドルの事はよく知りませんが、元モーニング娘の飯窪春菜さんのインスタグラムにて、「シュナの旅」(宮崎 駿/徳間文庫)とともに、チベットの民話「犬になった王子」(君島久子/岩波書店)も紹介されています。
 私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(君島久子・後藤 仁/岩波書店)も合わせて、是非ご覧下さい。

 https://www.instagram.com/p/CAKuIiyAyMJ/?igshid=14kl1hqy59o2o

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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