2018-02-11
東北・福島の旅(後藤 仁 東北・福島 絵本贈呈式) 後編
2日目(2018年2月7日) : 昨夜、「いわき湯本温泉 古滝屋」館内を少し探索してみると、絵本がたくさん置いてある、子ども部屋もありました。親子で来られる方には夢のスペースでしょう。朝、目覚めると温泉を一風呂浴びて、朝食をとりました。パンと玉子とミカンとコーヒーというシンプルなメニューですが、朝はこれで十分です。朝食の係をしていた女性は中国の方のようなので、少し中国旅行の話をしてみました。古滝屋は、なかなか雰囲気の良い老舗旅館でした。

9時頃、宿を立つと、昨夕、登れなかった塩屋埼灯台に向かいました。この灯台には前に一度登った事がありますので、これで2度目の訪問です。灯台の解説コーナーには、東日本・東北大震災で被害を受けた灯台の写真が展示されていました。灯台の上から太平洋を見渡すと絶景です。

その後、「いわき市 暮らしの伝承郷」という福島県の古い民家を移築した施設に寄りました。日本やアジア・世界の民家や民具・伝統衣装はとりわけ私の興味が高い分野です。まさに私が描いた絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版こどものくに ひまわり版)の世界そのものです。ゆっくり鑑賞したいのですが時間がありません。急いで見て回り、F4号のスケッチブックに20分程で民家を一枚描きました。何人かの子ども達が解説を受けながら熱心に見学していたので、私の作画絵本を一冊ずつ差し上げました。感性の豊かな人になるといいな~。
次に、「いわき市立美術館」でピカソやマチスから現代アートまでの絵画作品を急いで鑑賞しました。あまりに汚い旅用の身なりなので、絵本贈呈式用に少しましな格好に着替えて、急いで、大熊町役場いわき出張所に向かいました。途中、「すき家」で牛丼をかき込んで昼食にしました。

昼の1時前には、大熊町役場いわき出張所に到着しました。役場の周囲にも仮設住宅がたくさんありました。
今日は、「後藤 仁 東北・福島 絵本贈呈式」が開催されるのです。職員の方に手伝ってもらい絵本を役場に運び込みました。どんな感じの絵本贈呈式になるのかは、ほぼ先方にお任せしてあるのですが、きちんと絵本贈呈式の会場がしつらえてありました。
午後1時30分から絵本贈呈式が始まりました。地元テレビ局の福島放送や、読売新聞・毎日新聞・福島民友新聞社・福島民報社・いわき民報社といった新聞社の取材も入りました。今回、元法務大臣・元いわき市長の岩城光英さんに多大なるお力添えをいただき、福島県双葉地区8町村との橋渡しをしていただき、ようやくこの贈呈式が実現したのです。岩城さんには誠に感謝申し上げます。また、贈呈式を開催していただいた大熊町を始めとする、福島県双葉地区教育委員会の皆様に、心より御礼申し上げます。
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「後藤 仁 東北・福島 絵本贈呈式」
私から大熊町いわき出張所への「絵本贈呈式」。絵本3種類を、大熊町いわき出張所を通して、福島県双葉地方8町村の幼稚園・小学校・中学校 24校に、計120冊をご寄贈いたしました。
○寄贈絵本リスト
絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』 (福音館書店こどものとも) 1校1冊 計24冊
絵本『わかがえりのみず』 (鈴木出版こどものくに ひまわり版) 1校3冊 計72冊
絵本『金色の鹿』 (子供教育出版 石井式育み文庫) 1校1冊 計24冊
総計 120冊
○出席者
岩城光英 様(元法務大臣、元いわき市長)
武内敏英 様(大熊町教育委員会 教育長)
小野田敏之 様(葛尾村教育委員会 教育長)
秋元 正 様(川内村教育委員会 教育長)
舘下明夫 様(双葉町教育委員会 教育長)
石井賢一 様(富岡町教育委員会 教育長)
青木 洋 様(楢葉町教育委員会 教育長)
浅野 一 様(広野町教育委員会 教育長)〈所用により欠席〉
畠山熙一郎 様(浪江町教育委員会 教育長)〈所用により欠席〉
後藤 仁 (日本画家・絵本画家)
●日時 : 2018年2月7日(水) 13時30分~
「絵本贈呈式」式次第
13:30 開式のことば
主催者挨拶 双葉地区教育長会長 武内敏英 様
13:40 岩城光英 様 ご挨拶
13:45 絵本贈呈
13:50 後藤 仁 挨拶
14:10 閉式のことば
記念写真撮影、後藤 仁への取材
●場所 : 大熊町役場いわき出張所
〒970-1144 福島県いわき市好間工業団地1-43
【フリーダイヤル】0120-26-5671(代表) 【電話】0246-36-5671(代表) 【FAX】0246-36-5672 受付時間 8:30~17:15(平日)
http://www.town.okuma.fukushima.jp/guidebook/いわき出張所
●後援 : 福音館書店、鈴木出版、子供教育出版






私は、美術大学やカルチャースクールで長年、絵画講師の仕事もしており、展覧会等で講演会を催す場合も度々あり、人前で話すのには結構慣れているつもりなのですが、最近、年のせいか、単語・固有名詞が思い浮かばない場合が少々あるので困ります。まだ絵の話なら、どんどん単語も出てきますが、話慣れない内容だと難しいものです。今回の私のご挨拶では、何となく内容を頭で考えていたくらいで文章を持たずに話したのですが、「福島第一原子力発電所の被災による、帰還困難区域では、未だに家に帰れない多くの方々がおられ、町外への避難生活を余儀なくされております・・・云々」と言いたいところ、自分では緊張していないつもりでも、やはり元法務大臣や教育長の皆様、報道陣に囲まれて少しは緊張していたのか、「原子力発電所」も「帰還困難区域」も単語が吹っ飛んでしまい10秒くらい沈黙が続き、「福島では、未だに中に入れない地域があり・・・・」と極めて簡略化した言葉でごまかすしかなかったのが、少し悔やまれます。今後このような講演・挨拶の機会も増えそうなので、まだまだ色々な場に慣れなければいけないなと思いました。それでも無事、絵本贈呈式が終了して、ホッとしました。
福島の震災被害はまだまだ継続しています。全くの復興の途上なのです。大熊町では今も全町民11,505人が避難を余儀なくされているという事実を知り、他の町村も同様、未だに苦しい生活を続けられておられる事実を突きつけられると、私が好きな”絵”を描き続けられている事の幸せを改めてかみしめると共に、絵描きとして大した事はできなくとも、少しでも絵本の寄贈等を通して、福島の子ども達に”勇気”や”元気”を与えられはしないだろうかと、微力ながら願うばかりです。そして、絵本を読んで育った子ども達の中から、明日の日本を担う素晴らしい人物が出てくる事を期待しています・・・。私の真心である「絵本寄贈プロジェクト」は、これからも、熊本大地震やネパール大地震被災地や、日本中・世界中の子ども達へ届けられていく事でしょう。
人間は、「いわき市 暮らしの伝承郷」の昔の暮らしのような、”自然”に寄り添った生き方をしなければ、近い将来、いつの日か、「いわき市石炭・化石館」の恐竜たちのように、本当に滅びてしまう時が来るでしょう・・・・。
東京へ帰る時間が近づいていましたが、どうしても「国宝 白水阿弥陀堂」を描いておきたくて、最後に立ち寄りました。浄土庭園越しの白水阿弥陀堂をF4号スケッチブックに1時間程かけて写生しました。描きながら今回の旅の道中を、つらつらと思い出していました。・・・良き人達との交流も、楽しい出来事も、美しい光景も、また、辛い震災の記憶も・・・・。
夕方4時過ぎに、いわき湯本I.C から常磐自動車に乗り、東京方面に向かいました。車窓のだんだん暗くなっていく風景を眺めながら・・・、人々を飲み込んでいく巨大都市・東京という得体の知れない虚像を目指し、私は今後、絵描きとして何を為すべきか、黙考しつつ暗闇に向かって車を走らせました・・・・。
日本画家・絵本画家 後藤 仁