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2017-12-27

第36回この本だいすきの会 年の暮れ集会(市川グランドホテル)

 2017年12月26日は、「第36回 この本だいすきの会 年の暮れ集会」(市川グランドホテル)がありました。今回は、絵本作家・長野ヒデ子さんの講演会でしたが、とても軽妙で楽しいお話が聴けて、良かったです。
 その後、児童文学作家・画家・出版社編集者・会員を交えての交流会があり、約160人余りで楽しい一時を過ごしました。長野ヒデ子さんの他にも、人気絵本作家・ベテラン児童書作家の方々が毎年たくさん出席されています。また、最近は私のような50歳以下の若手作家も参加するようになってきています。昨年までは一会員として出席していましたが、今年の夏の集会からは、私も作家(絵本画家)扱いでの出席となり、作家のあいさつでは、絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)と、来年の「日本画・絵本原画展」の紹介をしました。
 本当は27日も「2日目 集会」がありましたが、日本画の制作を進めなければいけないのと、何かと雑事が残っており、残念ながら欠席しました。

年の暮れ集会2017「この本だいすきの会 年の暮れ集会」 作家・画家の平和へのメッセージ、私も書きました。

年の暮れ集会2017「この本だいすきの会 年の暮れ集会」 私のあいさつ。絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)と、来年の「日本画・絵本原画展」の紹介をしました。

年の暮れ集会2017「この本だいすきの会 年の暮れ集会」 絵本作家の きむらゆういち さんと私

年の暮れ集会2017「この本だいすきの会 年の暮れ集会」 最後は全員で輪になって歌をうたいます~♪。

 今年も誠に多忙な一年でしたが、来年は今の段階でも、「日本画・絵本原画展」2回と、「日本画・絵本関係イベント」7~8回と、「台湾写生旅行」が予定されており、作品制作・大学講師(東京造形大学、東京藝術大学) 等々、今年以上に忙しい年になる事は間違いないです。
 身体がもつのか分かりませんが、できうる範囲で最大限、頑張っていきたい所存です。
 本年は誠にありがとうございました、来年もよろしくお願い申し上げます。来年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます。

 来年は戌年(いぬ年)、そう、絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)の年なのですワン!! 🐶

  日本画家・絵本画家 後藤 仁

絵本『犬になった王子 チベットの民話』表紙 小絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)


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テーマ : お知らせ
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-12-21

松戸、東北・福島 「絵本寄贈プロジェクト・絵本贈呈式」

松戸、東北・福島 「絵本寄贈プロジェクト・絵本贈呈式」

 私は、絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』(福音館書店こどものとも)を、2013年2月1日に出版した直後から現在まで、各方面への「絵本寄贈プロジェクト」を続けて来ました。一つには、当然ながらより多くの人々に自分の描いた「絵本」を見てもらいたいという作家としての思いからです。もう一つは、東北被災地等の国内を始め、発展途上国の国々等、まだまだ「絵本」が足りていないであろう所に少しでも「絵本」を届けたいという率直な願いです。この活動は、絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)以降にも継続しています。
 出版社から自費で作画絵本を取り寄せ、一枚一枚に自筆サインを書き込んで、梱包して送付します。可能ならば国内・国外問わず、直接、足を運んで手渡ししていきます。現在(2017年12月)までに、東北被災地、松戸市・柏市周辺、中華人民共和国、スリランカ等の児童施設・学校・図書館 等に、計1,500冊位は寄贈して来ました。このプロジェクトが、「東北を忘れない・社会全体で助け合おう」という意識喚起にもつながるのではないかという期待もあります。
 東北等の被災地を始め、日本中いや世界中にはまだまだ「絵本(絵画・芸術・文化)」を必要としている所は多々あります。私は多くのアジア圏を旅しましたが、極めて貧しい生活を強いられている子供達を多く目の当たりにして来ました。幼い子が懸命に労働をしている姿を何度も見て来ました。(しかし、生活は貧しくとも、大抵の子供達の目はキラキラと輝きとても明るく元気です。)
 また、混迷する世界情勢の中で、日本画家の私が日本の伝統的な絵画表現である日本画で、中国等の民話を「絵本」に描く事により、日本と中国、そして世界への文化交流・平和交流の一助になれるのではないかという提唱でもあります。

 特に、この度の東北・福島への「絵本寄贈プロジェクト」では、元法務大臣・いわき市長の岩城光英さんに全面的なお力添えをいただき、今回の「絵本贈呈式」開催に結びついた事を、岩城さんへの感謝の念と共に、付記しておきます。
 今回の松戸・東北への絵本寄贈の後は、ネパール大地震熊本大地震の被災地への「絵本寄贈プロジェクト」を計画しています。私の微力ではなかなか及びませんが、時間をかけてでも機会があるごとに少しずつでも、日本中・世界中の子供達への「絵本」の寄贈を継続していかなければならないと考えています。

          *

絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版)s絵本『わかがえりのみず』 (鈴木出版こどものくに ひまわり版)

「松戸 絵本贈呈式」

○絵本寄贈先
松戸市立小中学校 知的障害特別支援学級に、計55冊

○寄贈絵本リスト
絵本『わかがえりのみず』 (鈴木出版こどものくに ひまわり版) 1学級1冊 計55冊

○出席予定者(現在分かっている範囲で)
 伊藤純一 様(松戸市教育委員会 教育長) 
 後藤 仁  (日本画家・絵本画家)  他

 私から松戸市教育委員会・松戸市教育長への「絵本贈呈式」。絵本『わかがえりのみず』を、松戸市教育委員会を通して、松戸市立小中学校 知的障害特別支援学級に1学級1冊ずつ、計55冊をご寄贈いたします。

日時 : 2018年1月12日(金) 15時30分~ (予定)

場所 : 松戸市教育委員会 教育長室
(〒271-8588 松戸市根本356 京葉ガスF松戸ビル5階)

【電話】047-366-7455 【FAX】047-368-6506

http://www.city.matsudo.chiba.jp/kyouiku/index.html

          *

絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』表紙画像絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』 (福音館書店こどものとも)

絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版)s絵本『わかがえりのみず』 (鈴木出版こどものくに ひまわり版)

絵本『金色の鹿』絵本『金色の鹿』 (子供教育出版)

「東北・福島 絵本贈呈式」

○絵本寄贈先
福島県双葉地方8町村の幼稚園・小学校・中学校 24校に、計120冊

○寄贈絵本リスト
絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』 (福音館書店こどものとも) 1校1冊 計24冊
絵本『わかがえりのみず』 (鈴木出版こどものくに ひまわり版) 1校3冊 計72冊
絵本『金色の鹿』 (子供教育出版 石井式育み文庫) 1校1冊 計24冊
  総計 120冊

○出席予定者(現在分かっている範囲で)
 岩城光英 様(元法務大臣、元いわき市長) 
 後藤 仁  (日本画家・絵本画家)  他
 
 私から大熊町いわき出張所への「絵本贈呈式」。絵本3種類を、大熊町いわき出張所を通して、福島県双葉地方8町村の幼稚園・小学校・中学校 24校に、計120冊をご寄贈いたします。

日時 : 2018年2月7日(水) 13時30分~ (予定)

場所 : 大熊町いわき出張所
(〒970-1144 福島県いわき市好間工業団地1-43)

【フリーダイヤル】0120-26-5671(代表) 【電話】0246-36-5671(代表) 【FAX】0246-36-5672  受付時間 8:30~17:15(平日)

http://www.town.okuma.fukushima.jp/guidebook/%E3%81%84%E3%82%8F%E3%81%8D%E5%87%BA%E5%BC%B5%E6%89%80

(※多分、いずれの「絵本贈呈式」も、新聞社・テレビ局等のメディア関係者のみに一般公開すると思われます。ご取材のお申し込みは、私もしくは、直接、各機関にお問い合わせ下さい。今後、多少の内容変更の可能性もありますので、ご取材・ご掲載等をご検討の新聞社・テレビ局等 メディア関係者の方は、随時、ご確認下さい。)

テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-12-21

日本児童出版美術家連盟(童美連)「忘年会」開催!!

 2017年12月19日は、日本児童出版美術家連盟(童美連)「忘年会」がありました。私は童美連 厚生部の部長でもあるので(こちらは展覧会実行委員会とは違って、ほぼ名目だけなのですが)、とりあえず写真を撮ったりしていました。
 約70名の童美連会員や絵本作家・イラストレーター、その他の方々でにぎわいました。このハワイアンダイニングバー・ティキティキ新宿店では、途中、ハワイアンダンスショーがあり、私も少し踊りましたが、今回は写ってはいませんね~。

 その後の二次会では、カラオケの人数が集まらないので今回はあきらめて、何人かで宮崎の鳥料理を食べました・・・、とても美味しかったです。 ( ^^) _U~~

 日本画家・絵本画家 後藤 仁

童美連忘年会2017ハワイアンダイニングバー・ティキティキ TikiTiki 新宿店

童美連忘年会2017童美連理事長の きたやまようこ さんの乾杯の音頭

童美連忘年会2017ハワイアンダンスショー、猫のダヤンで有名な池田あきこ さんも踊ります 😼

童美連忘年会2017ハワイアンダンスショー、猫のダヤンで有名な池田あきこ さんも踊ります 😹

テーマ : お知らせ
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-12-16

「絵本」「日本画」の模倣者たち

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)

 何度かこのブログでも触れた事ですが、ごく最近になって、私の知人でもある東京藝術大学等を卒業した日本画家達が、にわかに「絵本・絵本・・・」と言い出しました。私が把握しているだけで、院展系・無所属系日本画家6~7人はいますが、私の知らない作家を入れると、実数はその数倍~数十倍はいるでしょう。実際に児童書出版社から「絵本」を出版したり、「これから絵本を描きたい」等と公言しています。その中で、直接、私に相談してくれた人は一人だけで、私の予備校講師時代の教え子であり日本画界の後輩である、その日展所属 日本画家の画力・思考には素晴らしいものがあり、共に活動したいと思える人物です。それ以外の人は、他人に相談する義理は元々ないにしても、私に隠すかのように、こっそり絵本を出す始末です。
 私は約10年前に福音館書店から絵本制作の依頼を受け、5年近く前に初絵本を出版しました。「福音館書店こどものとも」は出版までにかなりの期間(作家・編集者にもよるでしょうが、およそ5~6年)がかかるので有名ですが、「福音館書店かがくのとも」や他の出版社からなら、半年~3年間程で出版に至るでしょう。つまり、彼らの出版時期から考察すると、どう考えても私が「絵本」の世界で活動し出して、私の評判をフェイスブックやブログ等のネットで知って、その活動を真似して、にわかに言い出したに違いありません。ちょっと位、「自分もやるよ!」と知らせてくれてもよいでしょうに・・・。日本画家には、従来から秘密主義の人が多いが、ここまで短絡的であからさまになると、人間的な道義心に欠ける行為と言えましょう。

絵本『犬になった王子(チベットの民話)』表紙 小絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)

 日本画家で「絵本」を描いたので知られている作家は、秋野不矩先生(文化勲章受章者)、堀 文子先生等の日本画界でも特別に著名な作家ですが、それらは日本画制作の傍らで少しだけ手掛けたという感覚です。院展・日展は縛りがきついので、少し昔は、絵本を描けるのは、ほとんど無所属か比較的自由度が高い創画会の所属作家に限られました。日展の東山魁夷先生が若い頃に絵本も手掛けていた事が最近知られて来ましたが、生前、東山先生は絵本を描いていた事実をひた隠しにしていたそうです。
 かつて、純粋美術(日本画・洋画・彫刻 等)の世界からは、出版美術・イラストレーション等の商業美術を低俗なジャンルと見る傾向が伝統的にありました。その為、よほど著名なトップクラスの作家は例外として、通常の日本画家が絵本等を手掛けると、ドロップアウトした・邪道に走った等と陰口を叩かれ、画商やコレクターが手を引いたと言います。これ程、イラスト・マンガ・アニメが隆盛を極める今日でも、その傾向は根強く残っています。それは古過ぎる日本画壇の体質によるもので、時代に即した意識改革ができないと、将来、日本画界はいよいよ衰退の憂き目を見る事になる恐れもあるのです。
 私は、本当に質の高い「絵本」は、純粋で高尚な美術品になり得ると確信しています。その為にも、日本画家として活動しながら、本格的に絵本(出版美術)の世界にも身を投じたのです。今の日本の絵本界の現状を俯瞰して、もっともっと優れた絵本を子ども達に提供しなければならない危機感を感じました。かつてのアーサー・ラッカムやビアトリクス・ポターや いわさきちひろ や赤羽末吉、滝平二郎のような芸術的な絵本を・・・・。

挿絵本『おしゃかさま物語』表紙挿絵本『おしゃかさま物語』(佼成出版社)

 ”絵”の世界も熾烈な競争社会なので、もちろん活動自体はその人の自由・勝手ですが、今まで絵本等に全く関心がなさそうに見えた人や、全く口にすらした事がない人まで、ごく最近「絵本・絵本」と言い出しました。バブル崩壊後、「日本画」の売り絵だけで食べて行くのは至難の業なのですが、事実としては出版不況の昨今、「絵本」を一冊出せるだけでもましな方で、それで食べて行くのは、これまた至難の業です。つまりはどちらの道も、極めて厳しくて、「日本画でダメなら絵本で・・・」とはいかないシビアな世界なのです。
 近年の日本画家、特に東京藝術大学の院展系の日本画家は、皆、売れている先生や先輩の画風・活動形態をそっくり模倣するきらいがあり、私が現代日本画壇に少々の嫌気と大きな疑問を感じた一因にもなっています。私が学生だった30年以上前から、福井爽人先生の白緑(びゃくろく)もみ紙や、宮迫正明先生の縦のハッチング、田淵俊夫先生、手塚雄二先生、吉村誠司先生辺りの画風をそのままマネている日本画家が山のようにいます。悲しい現実だ・・・。なぜ、「人がその道を行くなら、俺はこの道を行く。」とならないのだろうか? 個性・独自性・・・それこそ絵描きの命脈なのではないのか。
 私は、現代版の新しい「物語絵」を長年模索する中、福音館書店からのお声がけをきっかけに、自ら腹をくくって、本格的に「絵本」の業界に飛び込みました。日本画の長い経歴を一旦打ち捨ててでも、絵本の初心者として絵本業界内で頭を下げながら一から積み上げようとしている所です。その努力・苦労も知らずに、安易に「絵本・絵本」とよく叫べるものだ。
 つまみ食いの感覚で、結構ギャラがもらえたからオイシイ等と言う安直な考えで、日本画家・洋画家が「絵本」を語ると、結局、絵画も絵本もどちらも中途半端な作家に終わるでしょう。また、絵本を生業としているイラストレーターや絵本作家達に申し訳ない事をしていると思わねばなりません。絵本をやるのなら、その業界の事をもっと平身低頭、丁寧に勉強して、業界内での人間関係を作らねばなりません。

絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版)絵本『わかがえりのみず』(鈴木出版こどものくに ひまわり版)

 私は今、日本画家を基調として、物語絵の表現手段として「絵本」を大切に考えて描いています。日本画・絵本、どちらの業界にも通じて、いずれも本腰を入れて頑張っています。それはかなりの労力・気力を必要とする事で、安易な日本画のエリートぬるま湯に浸かっていた人には酷すぎる事であり、誰にでもできる事ではないのですが・・・。
 「日本画」「絵本」のみならず、前に私が手掛けた手製高級壁紙「金唐革紙(きんからかわし)」でも同様の事が言えますが、世の中には”本物”と”偽物”があります。肩書や表面上の実績だけでは真実はとうてい知り得ません。何が”本物”で何が”偽物”なのか・・・、その識別は極めて難しいのですが、よくよく観察さえしていけば、その一生涯の行動や思考に必ず見え隠れするものです。
 今、私の模倣者が次々に現れて来ました。それは見方を変えれば、私が同世代・後輩作家達に影響を与え、彼らが私の活動を認め、真似せざるを得なくなったともとらえられ、私に脱帽したも同然である事を、彼ら自らが告白していると言っても過言ではないのです。

 日本画家・絵本画家 後藤 仁

絵本『金色の鹿』絵本『金色の鹿』(子供教育出版)


テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-12-10

私の受けた三つの差別・偏見経験談(TBS報道特集「色覚異常」放送を受けて)

 2017年12月9日(土)、テレビのTBS報道特集で「色覚異常」をテーマに放送をしており、色覚異常の子を持つ親が悲しんでいる様子を見て、「そんなに気にする必要はなく、誰もが一つや二つくらいは何らかの障害を持ちながらも立派に生きているよ・・・。」というエールの気持ちを込めて、軽く自分のフェイスブック・ツイッターでつぶやきました。
 そしたら、ツイッターでのつぶやきへの反応が予想以上に大きくて、前に外国で大地震があった時に「クマリ(ネパールの生き神)」の日本画作品画像をアップした時も反応がありましたが、それを超える大きな反響(私のツイートにしてはですが)があり驚きました。テレビネタという理由もあるのでしょうが、色覚異常等の身体的個性に根強く残る、差別や偏見に対する人々の意識の大きさを反映しているのではないかと思いました。

「クマリ -The Living Goddess-(ネパール)」F50号日本画作品「クマリ -The Living Goddess-(ネパール)」(F50号) 後藤 仁

 私はこれまでの50年間の人生で、大きいものでは、およそ3度の差別や偏見にさらされました。
 一つ目は、当時は色覚検査で引っ掛かるのものの、ほとんど意識すらしていなかった「色覚異常」(当時は「色盲」という差別的な名称で呼ばれました。「色覚”異常”」も差別的と言えますが・・・)です。
 色覚検査の時、最も簡単な字は読めるのですが、3つ目位以降は読めません。逆にこれが読める人が不思議でなりませんでしたが、小中高校の40人のクラスの内で私だけか、他に1~2人位しか引っ掛かっていないようでした。大学受験時の大学に提出する身体検査でも当然ながら「色覚異常(赤緑色弱)」と判断され、東京藝術大学 日本画専攻を受ける時に、これが理由ではねのけられないだろうなと、フッと不安に思った事はあります。その時の眼科医が「これは見えるかな」と出した灰色っぽい点々の字は簡単に読めました。すると医者は「これは通常の(色覚異常でない)人では識別できない、わずかな白黒の違いで書かれた字なのだよ。たまに色弱の人で読める人がいる。」と言います。つまり色の弱点を白黒の濃淡識別で補っているそうで、どうりで私は着彩が少し不得手でデッサンが得意な訳だと思いました。
 ただ、私の色覚異常は軽いものなので、日常生活で困った事もほとんどなく(今思えば、黒板の赤い字が読みにくかった事等があったのかも知れませんが・・・)、今までに私の色覚異常に気付いた他人は、多分、美術予備校(立川美術学院)時代に水彩着彩を描いている時に、当時の日本画科講師の村上 隆さんが「後藤、葉っぱが赤色になってんじゃねーか。お前、色感がおかしいんじゃねーか。」と指摘された時位だと思います。さすがに村上 隆さんの感覚は鋭いな~と感心しました。

 二つ目は、高校時代、大阪市立工芸高等学校 美術科でクラスの大半から「無視」という差別(いじめ)を受けた事です。私は当時、美術実技・学科・体育ともにずば抜けた首席を保っており、それへの周囲の嫉妬・妬みも頂点に達していたようです。私は元来、変わり者ですし、あまり他人に気を使いもしないので、クラスで最も仲の良かった人と急に仲違いしたのをきっかけに(経済的理由で大学受験を断念したとかで、向こうが一方的に私を避けだしたのですが・・・)、高校2年の中期から、およそ1年半もの間、クラスの男5人程を中心にクラスのほとんどの男女から完全な無視と時に暴言を受けました。正直、かなりきつかったですが、大学に進学して”絵”を描き続ける事しか当時の私の頭になかったので、誰よりも早く学校に出て授業前にデッサンをして、放課後、誰よりも遅くまで水彩を描く毎日でした。他人との友好・交流はあきらめていました・・・。
 ただ、本心では極めて辛かったと見えて、卒業して東京の美術予備校に一人上京した後は、あまり本当の能力を出し過ぎずに、ほぼ年中バカ(ダメ人間)のふりをしてピエロを演じるといった、ひねくれた性格が助長されてしまいました。東京藝術大学 入学後もその傾向は続き、大学を2年間も通わずに半ば意図的に留年するという失態を繰り返しました。もし、私の最大の実力を出してしまうと、成績は首席近くになり~修士・博士課程進学、院展で平山郁夫先生門下としてエリート街道まっしぐら・・・等となり、また周囲からいらぬ差別や偏見・揶揄を受けるであろう事を、潜在的に避けたかったのだと思います。
 
 三つ目が、今までで飛び抜けて一番辛い経験なのですが、大学の卒業間近に父が急死した事です。中学・高校と反抗期の私のひねくれた性格で父と反目して、そのまま上京した私でしたが、本当は父は私の”絵の路”を心の底では最も理解して応援してくれていたのだと思います。
 東京藝術大学で卒業制作をしていた4年生の年末の事、突然、兄から電話があり、「父が死んだ、とにかく帰って来るように・・・」と言います。何が何だか分からずに、呆然と実家に帰りました。父が勤めていた大手企業(ここではどこかは言いませんが、誰もが知る大企業グループです)での退職間近の度重なる強制的な人事異動と退職勧告でうつ状態になった父は、突発的にビルの7階辺りから飛び降りて自殺したと言います。「うつ」は当時、労災には認定されませんでした。父の死に顔が穏やかだったのが、唯一の慰めでした・・・。真相は闇の中なので誰にも分かりませんが、その時、社宅の管理人をしていた父は、何らか間違ってビルから転落した、あるいは誰かに突き落とされた可能性もゼロではないと当時は思いましたが、状況からは自殺だと警察は確定しました。私も今では、うつ状態による自殺だったのだろうと考えています。遺書も何もなかったので誠に残念だったのですが、当時は私もひどく落ち込んで、大学の卒業謝恩会に出る気も全くなく欠席したら、事情を知らないクラスの皆から非難されました。当時はクラスの誰にも父の死は伝えませんでした。それ程、あまりにも辛過ぎたのです。
 父が死んで最初の1年間ほど、ほぼ毎夜、夜ごと父を思い出してはむせび泣きました。その後も折に触れて父の事を思い出しては涙しました。生き返った父に会う夢を、幾度となく見ました。人間はこんなにも涙が出るのだと知りました。中学・高校とわがままで父と反目し、親不孝のまま父を逝かせた事を、心から悔やみ、自分を責めました・・・。
 父の死後、8年目位に「インド写生旅行」をしました。その時、ガンジス川で夜に流し花を献花し、早朝に軽い沐浴をし、父を思い出して涙を流しました。その時の朝日が美しかった・・・。何か父もようやく私を許してくれた気がして、また、父は父なりに充実した人生を歩んだのではないかという気もして、心がさっぱりしました。それ以降も、父の事を思い出すと目頭が熱くはなりますが、父とのいい思い出だけが心にあるのです。
 「自殺遺児」という言葉があります。親を自殺で亡くした子は、ほぼ、自分を責めると言われています。周りの人々の好奇の目の偏見にもさらされ、口を閉ざし心を閉ざすと言います。私は27歳で父を亡くしたのでまだ幸いでした。それでも、一応の心の整理がつくまでに8年位、このように平気で他人に語れるまでには、20年近くもの年月を要しました。これが子供時代だったら、心の傷ははたして癒えたのでしょうか・・・。
 私は基本的に、精神的に尋常ならぬ強いものを持っているようなのですが、人はそれぞれ性格が異なります。もし、少しでも心が優しい人間だったら、今頃、私はこの世にいないかも知れません・・・。

絵本『犬になった王子(チベットの民話)』表紙 小絵本『犬になった王子 チベットの民話』 (君島久子 文、後藤 仁 絵/岩波書店)

絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』表紙画像絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』 (君島久子 文、後藤 仁 絵/福音館書店こどものとも)


 人は他人とは異なる、何らかの身体的・精神的個性を持って生きて行きます。それに対する偏見・差別というものは、多分、永久的に無くならないのでしょう。ただ、できる限り他者を理解し、個性は個性として尊重するといった心根・意識を最大限に心掛ける事が何よりも大切です。そうしていかないと、今の時代、個人・地域・国、それぞれのレベルでの軋轢というものは、とうてい永久に癒える事はないでしょう。

 日本画家・絵本画家 後藤 仁

テーマ : 差別について
ジャンル : 学問・文化・芸術

2017-12-04

後藤仁 作画、石井式育み文庫・絵本『金色の鹿』(バングラデシュ民話) 出版!!

☆好評発売中です!!☆

石井式育み文庫・絵本『金色の鹿』(バングラデシュ民話)
        〈日本漢字教育振興協會 推薦絵本〉

 編集部 文、後藤 仁 絵/子供教育出版


絵本『金色の鹿』絵本『金色の鹿』 (子供教育出版)


 美しくて優しい娘とシカやトラとの交流を描いたバングラデシュの民話です。金(きん)の大好きな王様の難問を娘はどう切り抜けるのか?
 ドーサ(にじみ止め)の効いていない和紙を使用して、にじみ・かすれの味を活かした、素朴かつ、エキゾチックな日本画に仕上げました。「歌」の場面には、ラオスの手すき紙を用いています。

 子供教育出版は小さな新しい出版社ですが、母体となっている歴史ある日本漢字教育振興協會の漢字を大切にする教育理念に共感したのと、編集者の熱心さを感じて、今回の絵本制作を受けました。

          *

※この絵本は学校等への直販方式ですので、ご購入方法等の詳細は下記の公式サイトに直接お問い合わせ下さい。

石井式漢字教育オフィシャルサイト ─ 特定非営利活動法人(NPO) 日本漢字教育振興協會  
http://www.ishiishiki.com/index.html

特定非営利活動法人(NPO) 日本漢字教育振興協會 オフィシャルサイト  
http://www.kanji-kyoiku.com/

合同会社 子供教育出版 フェイスブックページ  
https://www.facebook.com/kanjiehon/

(子供教育出版 編集部 電話  04-7189-8913)



テーマ : お知らせ
ジャンル : 学問・文化・芸術

後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵本ナビ「犬になった王子  チベットの民話」絵本ナビ「犬になった王子 チベットの民話」
絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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