2016-05-29
東京造形大学「後藤 仁 絵本特別講義」 にて


朝、雨の降る中、アトリエから2時間半をかけて八王子の東京造形大学に到着しました。東京造形大学・絵本講師で絵本作家の沢田真理 先生が入り口付近で待っていてくれました。
東京造形大学には日本画科がないので、今まであまり詳しくなかったのですが、東京藝術大学に次ぐ東京5美大(多摩美術大学、武蔵野美術大学、東京造形大学、女子美術大学、日本大学芸術学部)の一つに分類される難関美大だといいます。デザイン系では日本で4番目にレベルが高い大学だという事で、地方と比較すると、京都市立芸術大学、愛知県立芸術大学、金沢美術工芸大学の3大公立美大に匹敵するクラスのようです(実質的なレベルは東京造形大学の方が高いと思います)。優れたデザイナーを多数輩出している事で有名な桑沢デザイン研究所の姉妹校でもあります。最近話題の、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインされた野老朝雄さんも東京造形大学の卒業生です。(ちなみに私は、市松文様風で藍色を基調とするこのエンブレムのデザインを気に入っています。)
今年の「絵本講座」の受講者は102名という事で、東京造形大学の中でも、とても人気の高い講座なのです。女子学生が7~8割、男子学生が2~3割といった男女比でしょうか。教室に着いた時には、東京造形大学・絵本講師で切り絵作家の小宮山逢邦 先生が講評をされていました。学生は熱心に聞き入っていました。
2時限目が私の受け持ちです。持参した絵本原画(『犬になった王子 チベットの民話』岩波書店、『ながいかみのむすめチャンファメイ』福音館書店こどものとも、『おしゃかさま物語』佼成出版社、の表紙原画3枚)と、取材スケッチブック2冊、ラフスケッチ・ダミー(『犬になった王子 チベットの民話』2冊、『ながいかみのむすめチャンファメイ』2冊)、完成した絵本・挿絵本3冊を学生達にお見せしました。日本画の画材(筆、岩絵の具、金泥、にかわ等)も提示して解説しました。めったに公開する事のない、なかなか貴重な資料ばかりですので、学生達も興味を持ってくれていたら良いのですが・・・。
次に、「日本画の世界から絵本の世界に入ったきっかけ」と題して、私の絵画人生の生い立ちから、「福音館書店こどものとも」を手掛けるまでのエピソードを簡単にお話ししました。
90分の授業時間終了までに少し時間がありましたので、学生達から個々に質問を受けました。熱心な学生は色々な質問をしてくれました。女子学生の一部は積極的に質問するのですが、男子学生は少しおとなし目に感じました。
この中から、将来の美術界・デザイン界・絵本界を牽引する逸材が出て来る事を願いつつ講義を終えました。

講義の後は、東京造形大学・絵本講師の小宮山逢邦 先生、沢田真理 先生とご一緒して、東京造形大学の食堂で昼食をいただきました。東京藝術大学の大浦食堂で昼食を食べていた頃を懐かしく思い出しましたが、東京造形大学の食堂は何ともきれいで近代的です。周囲の緑も心地よく、こんな好環境の中で勉強できる学生は、幸せだなと感じました。校舎は磯崎 新 氏の設計という事で、斬新で近代的です。東京藝大の、お化けが出そうな薄暗い絵画棟とは大違いだな~と思いました。(と言っても、私はすす汚れた藝大美術学部の校舎が結構好きでした。)
まだ決定した訳ではないのですが、私は来年4月から東京造形大学の絵本講師を勤める予定であり、どのような素晴らしい学生に出会えるのかが、今から本当に楽しみです。
午後3時過ぎに急いで新宿に戻り、日本児童出版美術家連盟(童美連)の「第2回 著作権勉強会」に参加しました。20分遅刻しましたが・・・。この日は、黒井 健さんが、「月刊保育絵本クロニクル 絵本に見るこどもの背景」(日本児童出版美術家連盟)の編集時に著作権についてどのように取り扱われたか等をお話されました。その後はいつもの店で一杯・・・。 ( ^^) _旦
早朝から実に忙しい一日でしたが、誠に充実したすがすがしい日となりました。
日本画家・絵本画家 後藤 仁
犬になった王子――チベットの民話/岩波書店

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