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2015-06-27

『絵本のいま 絵本作家 2015-16 illustration FILE Picture Book』(玄光社)発売

絵本のいま 2015-16「絵本のいま 絵本作家 2015 - 16」 表紙 (画 : いわむらかずお先生)


 『絵本のいま 絵本作家 2015 - 16 illustration FILE Picture Book』 発売

 現在、第一線で活躍する絵本作家200人以上の作品を、作家ごとにプロフィールも含めご紹介した、絵本作家の仕事ファイル。私の知り合いの先輩作家・同輩作家も多く載っています。

 私、後藤 仁の作品は、「ながいかみのむすめチャンファメイ」(福音館書店こどものとも)「犬になった王子 チベットの民話」(岩波書店)日本画オリジナル作品「トン族琵琶歌~チャンファメイ」が掲載されています。また、巻末アンケート「2013 - 14年絵本デビュー作家にきく!」のコーナーにも私の文章が掲載されています。
 ぜひ、ご覧下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁

絵本のいま2015‐16 後藤仁ページ(ここでは、私のページのみ小さくお見せいたします。)

          *

 ISBN 978-4-7683-0633-8

  2160円 (2000円+税) 

  玄光社

   電話 03-3263-3515(営業部) FAX 03-3263-3045(営業部) 

 
●玄光社 公式ホームページ 「絵本のいま 絵本作家 2015 - 16」    
  http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=8514
 (玄光社 公式ホームページ  http://www.genkosha.co.jp/ )

●アマゾン(Amazon) 「絵本のいま 絵本作家2015 - 16」ページ
  http://www.amazon.co.jp/%E7%B5%B5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%BE-%E7%B5%B5%E6%9C%AC%E4%BD%9C%E5%AE%B62015-16-%E7%8E%84%E5%85%89%E7%A4%BE%E3%83%A0%E3%83%83%E3%82%AF/dp/4768306330%3FSubscriptionId=AKIAJSS6WYQT6TIVEVOA&tag=empa-22&linkCode=xm2&camp=2025&creative=165953&creativeASIN=4768306330




犬になった王子――チベットの民話アマゾン(Amazon)公式ホームページ
犬になった王子――チベットの民話
 君島 久子 文 / 後藤 仁 絵

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テーマ : 本の紹介
ジャンル : 学問・文化・芸術

2015-06-25

第18回 絵本学会大会(東京工芸大学)への参加

 2015年5月31日(日)、第18回 絵本学会大会に参加する為、東京工芸大学 中野キャンパスへおもむきました。

 昨年末頃、絵本作家の大先輩・長野ヒデ子先生から、私の絵本作品『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)が、第17回 絵本学会大会(刈谷市総合文化センター、愛知県刈谷市)の研究発表 A室 大会2日目〔中国の民話「長髪妹(チャンファメイ)」のイメージの変遷 浅野法子先生(梅花女子大学ほか非常勤講師)〕で取り上げられているという話を伺いました。前から絵本学会の存在は知っていましたが、どの様な研究団体か分からなかったのです。今年の第18回 絵本学会大会に参加すると良いですよと、長野ヒデ子先生がおすすめして下さったので、私も一般参加する事にしました。

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(君島久子先生 再話、後藤 仁 画 / 福音館書店こどものとも)


 31日は大会2日目です。(初日は仕事の都合で参加できませんでした。)大勢の人が会場にいました。10時から「研究発表Ⅱ」で、3つの教室から一つを選んで講義を聴きます。私は妖怪には関心が高いので、「妖怪絵本の歴史と現状」(富田克巳先生)を聴講しました。日本の妖怪絵本の歴史が詳しく語られ、なかなか興味深い講義でした。続いて、「ぬりえの特性」(浜崎由紀先生)、「米国教育使節団からの本の贈り物のなかの絵本」(細川七重先生)の講義があり、いずれも充実した内容でした。
 昼食をとっている時に来場者の方々と会話をしてみると、絵本学会の会員の多くが、大学の児童学・保育学などの研究者(教授、准教授など)で、中には各界の権威の先生もおられる様です。絵本作家もいますが少ない様でした。
 13時から「作品発表」で何人かの人が絵本原画作品を展示していました。プロの絵本作家というよりは大学の先生などの絵本研究試作品という様な感じですが、中には絵本作家を目指す若い人もいました。それぞれの作品に面白いものがあり、私はいくつか質問をして回りました。
 15時からは「ラウンドテーブル」で、3つの教室から私は「子どもの本屋の現場から」を選んで参加しました。子どもの本専門店の店主、奥山 恵さん(ハックルベリーブックス)、土井章史さん(トムズボックス)、三輪丈太郎さん(メルヘンハウス)がお話しをしました。奥山 恵さんには、私の活動拠点でもある千葉県柏市にハックルベリーブックスの店舗がある事もあり、恐竜絵本作家・黒川みつひろさんの絵本原画展におじゃました事もあり何度か面識がありましたが、他の方には初めてお会いしました。絵本画家にも為になるお話しが多くありました。
 研究発表やラウンドテーブルは3つの教室から一つを選ぶので、聴きたい講義が複数ある場合に参加できないという問題があるのですが、日程と会場の都合でやむを得ない事なのでしょう。
 最後に閉会式で、絵本学会会長でいわさきちひろ美術館常任顧問の松本 猛先生のご挨拶で大会は終了しました。丸一日のスケジュールは長くて大変ですが、絵本を真剣に語り合うとても有意義な時間でした。

 私は以前より、いわさきちひろを崇敬していますし、絵本作家の大先輩・長野ヒデ子先生のおすすめでもあり、かつて絵本学会会長を絵本作家の大御所・太田大八先生が務められていたという事でもあるので、私も力不足ながら絵本学会(会員数、約500名)に入会する事にしました。最近いくつかの団体に所属する事になり、元来器用ではない私は(手先は器用な方ですが)制作との両立ができるのか不安ではありますが、多くの事を学べるのではないかと期待もしています。

               *

 私の絵本作品『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)に関する講義内容・論文は、「絵本学会 NEWS No.52」や「絵本学会研究紀要 絵本学 2015 - No.17」にも掲載されました。
 講義・論文の趣旨は、口承の昔話を絵本化する時の時代変遷とその問題点というもので、必ずしも肯定的な話ばかりではないのですが、この様に絵本研究者に作品が取り上げられるという事は、作品の内容や意味合いが深いという証でもあり、作者にとっては光栄な事なのです。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁


絵本学会研究紀要 絵本学 2015─No.17 (表紙)絵本学会研究紀要 絵本学 2015 - No.17 (表紙)




○絵本学会 公式ホームページ: 第17回 絵本学会大会 研究発表 A室 大会2日目

○第17回 絵本学会大会(PDFデータ)

○絵本学会NEWS No.52 - 20~21ページ(PDFデータ)

○絵本学会 公式ホームページ: 絵本学会研究紀要 絵本学 2015 - No.17 (17号) (ホームページには、No.17までは掲載されていません)

 

テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

2015-06-22

和歌山県~兵庫県 写生旅行(2015年5月)その4 〈最終回〉

 2015年5月16日。この日は、私の生まれ故郷、赤穂市坂越(さこし)を散策します。私はここ坂越の小さな集落に生まれ、小学校1年生の夏休みに大阪府堺市 泉北ニュータウンに引っ越すまで、この地で幼少期を過ごしました。人の一生から見れば短い期間ですが、私の感性を育てた私にとって最も凝縮された大切な期間です。
 保育所に通っていた位に小さな頃・・・多分3歳頃に父と登った、あの山坂道をもう一度登ってみる事にしました。ここには大人になってからも故郷に帰る度に何度となく登っているのですが、何度登ってもなつかしさと充足感に満ちあふれるのです。いつかここを舞台にした絵本を描いてみたいと、いつも心の中でつぶやいています。

 赤穂市中心部から車で10分足らずで坂越に到着します。まずは大避神社(おおさけじんじゃ)に向かいます。この神社は昔から海の航海安全を祈願した所で、拝殿わきの回廊には多くの絵馬がかかっており帆船を描いた絵もあります。子供の頃にはここの巨大な絵馬を見て大いに興味を持ったものです。

兵庫の旅 大避神社大避神社 参道 (春には桜がきれいに咲きます) (坂越)

 大避神社の境内左奥から山に通じる小道が伸びており、ここから神社の裏山、茶臼山山頂を目指すのです。けもの避けの柵を越えて薄暗い林道を通ります。児島高徳(こじまたかのり)卿墳墓等を抜けて、宝珠山妙見寺観音堂に着きます。観音堂の蟇股(かえるまた)には十二支の動物が彫られていて楽しいですし、懸造り(かけづくり)の舞台からは美しい坂越湾が望めます。私も障壁画制作に加わったNHK大河ドラマ「元禄繚乱(げんろくりょうらん)」の撮影では、5代目中村勘九郎(のちの18代目中村勘三郎)が、ここから坂越湾を眺める大石内蔵助を演じました。

兵庫の旅 宝珠山妙見寺観音堂宝珠山妙見寺観音堂の裏手から坂越湾を望む (坂越)

 宝珠山奥の院を越え、所々にツツジの咲き石仏が鎮座した山坂道を更に登ると、30分足らずで茶臼山山頂に到着します。今になれば大した距離もない小さな山ですが、幼い頃、父に手を引かれて登ったこの山は、それはそれは高い山に感じられ、幼い私には大きな冒険だった事を今でもはっきりと記憶しています。
 山頂には幼少期の当時からNHKの電波塔が建っていて、風情はないのですが印象深い光景になっています。塔の周辺にはツツジが満開で良い香りがただよっていました。山頂から坂越湾の生島(いきしま)が一望でき、素晴らしい光景です。私の最も好きな地球上の光景の一つです。子供の頃の私達は生島を「ひょうたん島」と呼んでいたのですが、ひょうたんの様な面白い形をしています。

兵庫の旅 生島茶臼山山頂から望む 国の天然記念物・生島 (坂越)

 生島方面を1時間弱スケッチして、昼食のパンをかじって、下山しました。山の尾根を進むと宝珠山山頂にも至るのですが、今回は行きませんでした。裏手の山道を下りると、赤穂市街から清流・千種川(ちくさがわ)も見渡せます。足下には、子供の頃に通った坂越幼稚園と坂越小学校が当時とほとんど変わらない様子で見え懐かしい限りですが、子供の頃に父とよく行った銭湯も駄菓子屋も今はもうありません・・・。

兵庫の旅 赤穂市街茶臼山から赤穂市街・千種川方面を望む 木々の間からわずかに坂越幼稚園と坂越小学校が見えます

 坂越湾岸辺に下りた私は、しばらく波音を聴きながら生島をぼんやりと見つめていました。その後、旧坂越浦会所(幼少期の私はここで予防接種を受けたそうです。)を見学し、坂越の大道(だいどう)を通り、奥藤酒造郷土館、坂越まち並み館を見て、坂越幼稚園辺りまで来ました。幼稚園・小学校は本当に当時のままの姿です。この幼稚園では誕生日に絵本が一冊もらえたので、それが何よりの楽しみでした。私が絵を描くのを好きになったのは、この辺りの影響も強いと思います。園庭でカメをはなして、みんなで絵を描いた事を昨日の様に覚えています。それにしても子供の頃の私は本当にワンパク小僧で、近所の子供とケンカをしたり、一日中外で泥んこになって遊んだものです。私が育った長屋風の借家も、日々通った銭湯も、楽しみだった2件の小さな駄菓子屋「ワタダ」と「ムレヤ」も、砂ぼこりだらけの路地も・・・今はありませんが、まぶたの裏にはしっかりと存在が刻まれています。ここの光景を眺めていると、なつかしさでいつも涙が出そうになるので、来た道を引き返しました。
 旧坂越浦会所の外観を1時間余りスケッチして赤穂市街に戻り、赤穂城跡の本丸門上層部屋が特別公開されていたので見学して一日を終えました。

 翌日17日には新幹線で松戸に帰り、こうして、「後藤 仁 絵本原画展」(ちいさな駅美術館、和歌山県有田川町)から始まる、一週間余りの「和歌山県~兵庫県の旅」が終わりました。
 今年の秋頃には本格的な東北写生旅行を計画しています。来年はまた海外写生旅行にも出かけたいものです。こうして私の旅の人生は続くのです。
  日本画家・絵本画家 後藤 仁

テーマ : 旅と絵
ジャンル : 学問・文化・芸術

2015-06-11

和歌山県~兵庫県 写生旅行(2015年5月)その3

 2015年5月14日、今日は丹波篠山(たんばささやま)を探索します。ここは丹波の黒豆で有名で、前から訪れたかった所です。まずは街のシンボル、篠山城に向かいます。朝9時前に到着したので、まだ入場できません。堀の周囲を回って外観を観察してから、入口付近の櫓台(やぐらだい)跡から大書院(おおしょいん)を望む場所でスケッチしました。朝の静かな時間、1時間あまりスケッチしていると、近くの幼稚園から子供達の元気な声が聞こえて来ました。

兵庫の旅 篠山城篠山城

 篠山城に入場して、近年復元された大書院等を観賞しました。大書院内部の廊下の造りは、出石(いずし)の宗鏡寺(すきょうじ)のものと似ていますが、参考にしたのかも知れません。
 その後、御徒士(おかち)町武家屋敷群の小林家長屋門、武家屋敷安間家史料館を経て、青山歴史村、大正ロマン館、春日神社、歴史美術館を回りました。安間家史料館には藁葺き屋根の母屋や水琴窟があり、庭には花々が咲いていて手入れが行き届いています。青山歴史村には「鼠草子(ねずみのそうし)絵巻」というネズミを擬人化した面白い絵巻物が伝来されており、大いに興味を持って観賞しました。春日神社は主要な観光コースには入っていませんが、絵馬や能舞台等の見どころも多く、広い境内はくつろげます。歴史美術館には源氏物語絵巻や昔の裁判所があり見応えがあります。
 この辺りで昼過ぎになりお腹が空いて来ました。歴史美術館の近くの商店街に大手食堂という大衆食堂があり、名物牛とろ丼とあるので入ってみました。牛とろ丼(1000円)は牛肉のたたき風にとろろ芋がたっぷりとかかったボリュームのある丼で、実に美味しいです。店内には著名人らしき色紙がいっぱい掲げてありましたが、ひときわ目立った写真付きの色紙は、若かりし頃のさだまさし氏のものです。私はさだ音楽には中学生の頃より親しんでいますので、彼もここでうんちくを語りながら食したのかと思うと、軽い笑みがこぼれました。

兵庫の旅 大手食堂大手食堂・・・ここの牛とろ丼は絶品 ( ^^) _U~~

 その後、河原町妻入商家群を回りました。この日は観光客もほとんどいなくて、ゆっくりと拝見できました。丹波篠山には古い街並みが整然と残されており、歴史好きの私としては好奇心が尽きません。
 まだ時間があるので、安間家史料館に戻り、母屋を1時間程スケッチしました。私は伝統家屋にも相当に関心が高いのです。

兵庫の旅 河原町妻入商家群 本屋さん河原町妻入商家群 街の本屋さん・・・ここでは書店もこんなに風情があります。本を読みたくなりますね (^^)/

 こうして2日にわたって城下町の風情を満喫した私は、舞鶴若狭自動車道、中国自動車道、山陽自動車を経て、赤穂に帰りました。

               *

 5月15日は赤穂(あこう)を散策しました。赤穂市は私の生まれた土地であり、それこそ何度も訪れていますが、何回来ても良い所です。赤穂御崎(あこうみさき)の伊和都比売(いわつひめ)神社は瀬戸内海に向かって建っており独特の景観です。赤穂市立美術工芸館 田淵記念館には初めて入りました。赤穂ゆかりの昔の画家の作品展示がしてありましたが、私も知っている著名な画家はいませんでした。私も将来、「赤穂ゆかりの画家」と呼ばれる日が来るのだろうか・・・?。
 次に赤穂御崎の海岸に降り、大塚海岸の遊歩道を歩きました。この辺りの海岸線はとても美しくて、子供の頃は家族や親戚と、丸山海岸(現在、丸山県民サンビーチ)で海水浴をしたものです。遊歩道には何種類かの花々が咲いていました。ハマヒルガオ、ハマダイコン、スイカズラ、トベラ、ユッカラン・・・この季節、野生の花はあまり見られないだろうと思っていましたが、海岸に咲く花々が見られて良かったです。美しいシャリンバイ(車輪梅)が咲いていたので、軽くスケッチしました。釣りをしていた近所のおじさんが「うまいね~」と声をかけて来ました。関東ではスケッチ中に話しかけて来る人は、まれに美術関係者等(趣味で絵を描いている人等)がいる位ですが、関西では一般人でも時折気さくに話しかけて来られます。この辺りが、関西(大阪近辺)が小アジアたるゆえんで、人間味があふれています。

兵庫の旅 赤穂御崎 大塚海岸赤穂御崎 大塚海岸

兵庫の旅 赤穂御崎 猫赤穂御崎では御崎ネコにも出会えますよ (=^・^=)

 次に、桃井ミュージアムという最近、赤穂御崎にできた美術館で陶磁器を見学。午後は赤穂八幡宮、赤穂城跡、大石神社へと足を延ばしました。赤穂八幡宮は私が幼少期に七五三で参拝した神社です。私が最も気に入っている記念写真の一枚が、その時に赤穂八幡宮の拝殿前で撮影した家族写真です。大石神社は、私も障壁画制作に参加したNHK大河ドラマ「元禄繚乱」放送以降に観光客が増えて、今でも多くの参拝者がいます。

兵庫の旅 赤穂八幡宮赤穂八幡宮

赤穂八幡宮 家族写真赤穂八幡宮 七五三での家族写真(1970年頃) 右下:後藤 仁(3歳位)・・・この頃はカワイイね~ (*'ω'*)


 明日は、私の生まれ故郷、赤穂市坂越(さこし)の美しく懐かしい街並みを歩きます。この模様はまた次回といたしましょう。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁  

テーマ : 旅と絵
ジャンル : 学問・文化・芸術

2015-06-03

和歌山県~兵庫県 写生旅行(2015年5月)その2

 2015年5月10日の「後藤 仁 絵本原画展」(和歌山県有田川町 JR藤並駅)のギャラリートーク・絵本朗読会という重責を終えました。当日は、なつかしい親戚から中学校と高校の恩師にまで再会でき、記帳によると小学校の恩師も別の日に来館されていた様で、その他、定員を超える多くの絵本ファンの皆様にお越しいただきました。
 5月11日。ご来館された皆様の顔を思い返し、「遠くまで出向いて良かったな・・・・」と回想しつつ、車窓を通り過ぎる風景をボンヤリと眺めていました。特急くろしお と新幹線を乗り継いで、夕方には故郷の兵庫県赤穂(あこう)市に着きました。ここには私のアトリエを兼ねた隠れ家があります。
 
 5月12日、この日は、私も所属する「この本だいすきの会(代表:小松崎 進 先生)」の上郡(かみごおり)支部の方にお会いする約束がありました。赤穂から車で20分あまりで上郡に着きます。その方が言うには、絵本画家の秋野亥左牟(いさむ)さんのアトリエがあるとか何とかという事で半信半疑ながら行ってみると、本当にアトリエ(現在は展示館になっています。)があり亥左牟さんの奥様が出迎えてくれました。秋野亥左牟さんは数年前に亡くなられたそうです。
 私が絵本の仕事を始めた時、最初に福音館書店編集部の方が見本として持ってこられた絵本が、秋野亥左牟さんの『プンク マインチャ』と秋野不矩先生の『きんいろのしか』でした。『プンク マインチャ』はアジア好きネパール好きの私にとって、とても刺激的な絵本でした。強烈な色彩と不思議な画面構成に驚いたものです。秋野不矩先生は文化勲章も受章された日本画界の巨匠のお一人で、私は大学生の頃より存じており、私も興味の深いインドをテーマに描かれており、関心の高い日本画家でもありました。秋野不矩先生のご子息が亥左牟さんだと知ったのはごく最近です。
 少々テンションの上がった私は、亥左牟さんの原画を拝見したり、奥様から生前の亥左牟さんのお話しを聴いたりと、誠にうれしい時間を過ごしました。思いがけなく、奥様から亥左牟さんの絵本『神々の母に捧げる詩』(福音館書店)をプレゼントされ、亥左牟さんの手彫りの印章を押してもよいという事で、秋野不矩先生ご愛用の印泥(いんでい。一般に言う朱肉にあたるもの)を使わさせていただき押印しました。秋野不矩先生の手のぬくもりが印合(いんごう。印泥を入れた陶磁器等の器)から伝わって来て、亥左牟さんが押したであろう印章からも「次の時代を頼むぞ。」という声が聞こえてくる様で、絵描きならではの興趣にふけっていました・・・。
 絵描きにとっての貴重なこの経験は、決して忘れる事はないでしょう。生前の亥左牟さんとお話しができなかった事は実に残念ですが、私の生まれ故郷の赤穂のこんな近くに、秋野亥左牟さんの終(つい)のアトリエがあったとは、何かしらのご縁を感じずにはいられません。

 兵庫の旅01秋野不矩先生の印泥と、秋野亥左牟さんの手彫り印章


 5月13日から14日は一泊二日で、兵庫県の出石(いずし)と丹波篠山(たんばささやま)を回る事にしました。兵庫県周辺はほとんどの見どころを網羅しているのですが、それでもまだ訪れた事のない土地は残っています。 
 13日の昼前に車で出石に到着。赤穂から山陽自動車道等を経由して3時間弱でしたでしょうか。出石城跡からかなり急な山道を登り、山頂の有子山(ありこやま)城跡に着きました。ここからは出石の街並みが一望でき爽快です。他には誰一人登って来ないので、風景も独り占めです。ここで持参したおにぎりをほおばりました~山頂での弁当は美味しいネ ( ^^) _U~~ 。

兵庫の旅02有子山城跡から出石の街並みを望む

 山をおりてふもとの神社仏閣を拝観しました。経王寺(きょうおうじ)という寺を出て、周囲を興味津々で見まわしながら歩いていると、何やら妙に弾力のある物を踏み付けました。足元を見ると蛇をまともに踏んでいるではありませんか。驚いた私は「ヒョーット」と奇妙な声を上げて飛びのきました。変な声を出してしまったので周りに人がいないか確認しましたが、誰もいなくてシーンとしており、ただの独り遊びでした。その蛇をよく見るとマムシです !('Д')! 。
 私は小学校2~3年生位の時に父の実家の大垣(おおがき)で、マムシに遭遇した事がありました。側溝のふたの隙間に蛇がとぐろを巻いていたので、興味本位で手を出すと、スッと飛びついて来て親指に牙がかすりました。子供の頃のやんちゃな私は度々シマヘビ等をつかまえては遊んでいたのですが、その時は子供ながらに危ないものを直感して、その場を去りました。蛇の体の不気味な小判模様が頭に焼き付きました。それがマムシだと知ったのは、随分後の中学~高校生の頃です。
 人生で2度目のマムシとの遭遇です。すかさず観察しました。マムシは私の方に鎌首をもたげ、しっぽの先を振って、威嚇して来ました。ガラガラヘビの様にしっぽの先を振るとシュルシュルと警告音がしました。マムシは普通の蛇より小さめですが、胴体は結構太くて、顔のえらがはっており、しっぽは急速に細くなっています。エサでお腹のふくれたマムシをツチノコだと思い込んだという説は納得できます。スケッチしようと思ったのですが、すぐに岩の隙間に逃げて行ってしまい写真におさめただけでした。しかし、子供の時もそうですが、今回も一歩間違えたら噛まれていたかも知れず危ない所でした。

兵庫の旅03威嚇して来るマムシ

 その後、出石明治館、宗鏡寺(すきょうじ)と回りました。宗鏡寺は別名、沢庵寺(たくあんでら)と呼ばれ沢庵和尚が修業した事で知られています。寺の若いご住職が丁寧に庭の解説をしてくれました。ここの庭園はとても美しくてゆったりと観賞できます。
 次に暑い日差しの中、酒蔵(出石酒造)を1時間近くスケッチしました。その後、出石史料館、辰鼓楼を見て、ここの名物・出石皿そばを「正覚田中屋」で食べました。小皿に盛られたそばは見た目も楽しいものです。

兵庫の旅 宗鏡寺宗鏡寺(沢庵寺)


 兵庫の旅04出石皿そば(正覚田中屋)

 その後、おりゅう灯籠(船着場灯籠)、見性寺(けんしょうじ)、出石永楽館(近畿最古の芝居小屋)を回ると夕方になっていました。城下町の風情を思いっきり楽しめた私はひとまず満足し、次の丹波篠山を目指して地図と格闘しながら車を進めました。

 薄暗くなる頃、丹波篠山に到着。少々道に迷いながら、ガイドブックで見当を付けておいた「県立新たんば荘」という宿に飛び込みました。素泊まりで5940円です。明日は丹波篠山の街並みを歩きますが、その模様は次回といたしましょう。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁




テーマ : 旅と絵
ジャンル : 学問・文化・芸術

後藤 仁 プロフィール

後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)

Author:後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)
~後藤 仁 公式ブログ1~
絵師〈日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙制作〉後藤 仁(JIN GOTO、后藤 仁、고토 진)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

【後藤 仁 略歴】
 師系は、山本丘人(文化勲章受章者)、小茂田青樹(武蔵野美術大学教授)、田中青坪(東京藝術大学名誉教授)、後藤純男(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)。
 アジアや日本各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」を中心画題として、人物画、風景画、花鳥画などを日本画で描く。また、日本画の技術を応用して、手製高級壁紙の金唐革紙(きんからかわし/国選定保存技術)や、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)の天井画、絵本の原画などの制作を行う。
 国立大学法人 東京藝術大学 デザイン科 非常勤(ゲスト)講師(2017~21年度)。学校法人桑沢学園 東京造形大学 絵本講師(2017~18年度)。日本美術家連盟 会員(推薦者:中島千波先生)、日本中国文化交流協会 会員、絵本学会 会員。
    *
 1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校 美術科で日本画を始める。東京藝術大学 絵画科日本画専攻 卒業、後藤純男先生(日本芸術院賞・恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。
 卒業以降は日本画家として活動し、日本・中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画/日本の美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は「絵本」の原画制作に力を入れる。
 2023年、大垣祭り(ユネスコ無形文化遺産)天井画『黒龍と四つ姫の図』を制作奉納する。

○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、『金色の鹿』(子供教育出版)、『青蛙緑馬』(浙江少年児童出版社/中国)。挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。
 『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。また、宮崎 駿 氏の絵物語「シュナの旅」の原話になった事でも知られている。
○NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞・専門誌・インターネットサイト等への出演・掲載も多い。

★現在、日本国内向けと、中国向けの「絵本」を制作中です~❣

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絵本ナビ「犬になった王子  チベットの民話」絵本ナビ「犬になった王子 チベットの民話」
絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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