2013-12-28

第32回この本だいすきの会 年の暮れ集会 (市川グランドホテル)

 この本だいすきの会01「この本だいすきの会 年の暮れ集会」黒井 健 先生のご挨拶

この本だいすきの会02「この本だいすきの会 年の暮れ集会」黒井 健 先生と私

 2013年12月26日は「第32回この本だいすきの会(代表:小松崎 進 先生) 年の暮れ集会」(市川グランドホテル・千葉県)に参加し、黒井 健 先生の講演会を聴いて来ました。黒井先生のお話しは、ゆったりとした中にも、絵本画家としての意志を感じる、面白いものでした。絵本画家としても踏み出した私にとって、大いに為になる制作秘話等を伺い、とても有意義な時間が過ごせました。サイン会では長い行列が出来ており、黒井先生の人気の高さを改めて感じました。
 その後、交流会もあり、多くの絵本関係の作家・研究者・会員の方々と歓談しました。市川は私のアトリエからも近く、これをきっかけに私も「この本だいすきの会」に入会する事にしました。
 
 今年一年は、絵本制作・出版、展覧会開催、会合、雑用・・・等々、とても忙しい一年でした。来年は年初から「後藤 仁 絵本原画展」の準備等、また目まぐるしい年となりそうですが、精一杯頑張って行こうと思っております。来年もよろしくお願い申し上げます。 
  日本画家・絵本画家 後藤 仁
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テーマ : 展示会、イベントの情報
ジャンル : 学問・文化・芸術

2013-12-23

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』出版までの永き道のり その15(完結篇)

 絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』(福音館書店こどものとも)の原画制作を終えた私は、2012年3月8日に福音館書店に原画20点を納品しました。長い歳月心を込めて描いて来た作品は、自分の子供の様でもあり、手を離れる時にはいつも一抹のさみしさが残ります。福音館書店編集部は、この原画をとても気に入ってくれた様です。
 福音館書店こどものとも、は毎月異なる作家が「絵本」を手掛けますので、かなり先まで出版予定が組まれています。そんな関係もあり、私の「絵本」も2013年3月号と随分前から決定していました。しかし、更にその相当前から描き始めていた私は、提出期限よりかなり早く描き終えた事になるのです。

 色校正までの間に、岩波書店の新作絵本『犬になった王子 チベットの民話』の取材で、中国チベット自治区・四川省等に行ったり、そのラフスケッチを練ったり、君島久子先生・岩波書店編集部と打ち合わせをしたりしていました。

 2012年9月25日に福音館書店の打ち合わせがあり、「第一場面」を少し手直しして、10月3日に再度納品しました。編集部も絵本制作にかなりのこだわりがあると見えて、作家にとっては大変なのですが、この様な妥協をしない姿勢はとても良いのではないかと思いました。
 11月16日に福音館書店本社で絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』「色校正」をしました。3時間あまりかけて、原画と印刷を照らし合わせ、一枚一枚、色の変更指定をしていきました。「日本画」の美しい色は、印刷ではどうしてもくすんでしまい上手く発色しません。特に胡粉の白の抜けと、墨等の黒の締まり、緑青の透明感、朱の強い発色等は、良くは再現出来ませんでした。「日本画」の絵具は、孔雀石・藍銅鉱・水晶等の宝石・鉱物類や、カキの貝殻や、金・銀・水銀・鉛等の金属類等で出来ており、その美しさを印刷で表現するのは最初から限界があるのです。(ぜひ、「絵本原画展」で原画をご覧下さい。)しかし、福音館書店編集部と印刷会社の精興社も最大限の努力をしていただき、「絵本」として納得が出来る高品質な色再現をしていただけたと思います。細部の描写等は予想以上に再現出来ていたので、技術の高さに感心しました。

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・表
絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・裏絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』表紙・裏



 こうして画家の私と、文章の君島久子先生と、編集部の三位一体の絵本制作は完了し、2013年3月号の出版となりました。
 この「絵本」は3月号というので、私は3月1日発行と思い込んで絵本案内等をしていたのですが、実際は2月1日発行で最後は逆に少し焦る破目になりましたが、無事出版出来てホッとしました・・・。
 2月22日には原画が私のアトリエへ里帰りし、この後「絵本原画展」であちこちを旅する事となります~。
 

 通常の「日本画」の制作では、取材・構想・エスキース(下図)・本画制作と基本的に一人での孤独な仕事となります。人によっては師匠や画商等の意見を取り入れたりする様ですが、本来一人で全てをこなすのが絵描きの理想です。
 それに対して「絵本」は、画家と、文筆家と、(この2つを兼ねる人も多く、私もいずれ「文」も手掛けたいと考えています。)編集者の三位一体での制作になります。印刷会社等も含めると実に多くの人の手が加わる事で生み出されており、「日本画」とはまた違った共同制作の面白味がある事が分かりました。
 今まで絵描きの孤独な制作スタイルで生きて来た私には、最初こそ多くの指摘が加えられる事に対しての抵抗感がありましたが、それが「絵本」の普遍性・一般大衆性にもつながる・・・と、だんだん理解されて来ると、それも楽しく感じる様になりました。
 今後も「日本画」の孤独・個性探求の世界で描いていくとともに、「絵本」の集団・一般大衆化の世界でも描いていきたいと願っております。それぞれ違った魅力を持ち合わしており、お互いが上手く作用すれば、更に面白い「後藤 仁ワールド」が出現するのではないかと私自身期待しています。

          *

 今回、制作に対してとても真面目で熱心な編集者達と出会う事が出来て、私は幸運であったと実感しています。また、今日までの多くの方々のご支援があったからこそ、こうして一冊の「絵本」に結実したと感謝の念を抱いております。
 私の初絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』の出版を支えて下さいました、君島久子先生を始め、編集部の方々、今まで応援して下さいました皆様に心から御礼申し上げます。
 また、今後とも「日本画」「絵本」の世界で誠心誠意、制作に尽力してまいりたい所存ですので、ご教導の程よろしくお願い申し上げます。 日本画家・絵本画家 後藤 仁 

テーマ : 絵本・制作・イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

2013-12-13

絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』出版までの永き道のり その14

 絵本『ながいかみのむすめ チャンファメイ』(福音館書店こどものとも)の制作も、2012年初めに「第15場面」に入りました。この場面は物語の大団円です。多くの要素が盛り込まれています。
 長い髪をなびかせながら喜び一杯で家に向かって走るチャンファメイ。それを迎える子ブタ達。母は家で寝ています。大きくそびえるガジュマルの木。時を告げるニワトリ。トン族村の入り口に建ってある木の門も描き込みました。畑で楽しそうに作物を収穫する人々。(水が出てすぐ作物が実り収穫というのは変なのですが、そこは「絵本」の誇張表現です。)
 楽しそうに遊ぶ子供達。これらの遊びは、中国の現地やタイ・ベトナム・ラオス等の近隣諸国で実際私が見たものや、中国・アジア諸国と日本の歴史資料等を元に描いています。こま回し、竹馬、縄跳び、蹴鞠、ケンケンパー等、日本の昔日を思わせる素朴で懐かしい遊びが、アジア諸国では今も行われています。日本と同じ様にゲームをする子も増えているでしょうが、たいていの子は外で元気に遊んでいますよ。ちなみに、この子供達が遊ぶ場面は、私の敬愛する洋画家ピーテル・ブリューゲルへのオマージュでもあります。
 庭先では水が出たのを祝う祭りが始まっています。トン族の伝統的な舞踊です。女性の頭はニワトリの羽根で飾られています。男達が奏でているのはトン琵琶です。私は実際現地で、幾つかのトン族舞踊・舞踊劇を取材しました。絵を良く見ると、嬉しさ余って時間と空間を飛び越えて舞踊に参加している私もいます。傍らにはいつも旅で用いるリュックサック、スケッチ道具、カメラも置いてありますが、これはご愛嬌です。私は実際、この様に舞踊の最後に引っ張り出されて踊らされました。
 遠くには白く長く流れる滝が見えます。その右上を良く見ると、あの恐ろしい山の神の洞窟があります。普段は雲で隠れて絶対に見えないのですが、滝が現われた吉祥で霊力が弱まったのでしょう。

 次は「後ろ扉」です。この場面は物語の後日談になります。トン族の伝統刺繍文様をあしらった画面に、子ブタを抱くチャンファメイと、それを見て微笑む少し元気になった母親を描きました。水も行き渡り草や花も咲いています。・・・そこには、素朴だけれども平和で幸せな時があります。ちなみに、このチャンファメイの慈愛をたたえた微笑みは、私の崇敬するラファエロ・サンツィオの聖母子画へのオマージュでもあります。それはまた、悲母観音のまなざしと言っても良いでしょう。

 「見返し」にはトン族の銀製の背飾りと、子ブタを描きました。配色は、トン族衣装の藍染めの紺色をイメージしました。トン族女性の背中には、銀で出来たこの様な装飾品が取り付けられています。渦巻き文様(水流を表すとか、太陽を表すとかの解釈がなされています。)には魔除けの意味があるそうです。トン族では、”魔”は背中や襟・袖口等から入って来ると信じられており、その箇所に渦巻き文様を施します。第4場面のチャンファメイの後ろ襟にも刺繍の渦巻き文様が見られます。日本でも古来から渦巻き文様には魔除けの意味合いを持たせており、文化的共通点がここにもあります。
 極めて良く見ると、最初の「見返し」の渦巻き文様の中の”龍”の画が上下逆さに向いており、後の「見返し」では、正しい向きになっています。たった一人の山神によって水が出なくなった世界は倒錯した不条理な世界です。全ての人々に公平・平等に水が行き渡る世界こそ、本来の正常な世の中であると言う事を示唆しています。

 私の「絵本」には隠れたキャラクターやメッセージがたくさん描き込められています。それらを見つけてひも解いていくのも、また「後藤 仁 絵本」を見る楽しみとしていただけましたら嬉しいです。

            *
 
 これでようやく2012年2月7日をもって、2011年5月31日から8か月の期間をかけた本画制作が終わりました。非常に疲れましたが、誠に充実した楽しい制作でした。絵本制作や絵画表現上の多くの事も学びました。
 2月22日に福音館書店編集部と打ち合わせをして、絵に少しの手直しを加えて、2012年3月8日に福音館書店に作品全20点を納品しました。
 この後、色校正を経て、絵本出版と至るのですが、この後も事情により結構時間がかかりました。そのお話はまた次回といたしましょう。 日本画家・絵本画家 後藤 仁
 

テーマ : 絵本・制作・イラスト
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

後藤 仁(GOTO JIN)

Author:後藤 仁(GOTO JIN)
 ~後藤 仁 公式ブログ1~
日本画家・絵本画家 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画制作、絵本原画制作、写生旅行、展覧会などのご案内を日誌につづります。

  〔後藤 仁 略歴〕
1968年兵庫県赤穂市生まれ。15歳、大阪市立工芸高校美術科で日本画を始める。東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業、後藤純男先生(恩賜賞受賞者)に師事。在学中より約12年間、旧岩崎邸、入船山記念館、孫文記念館(移情閣)等の金唐革紙(手製高級壁紙)の全復元を行う。卒業以降は日本画家として活動し、中国・インドをはじめ世界各地に取材した「アジアの美人画」をテーマとする作品を描き、国内外で展覧会を開催する。近年は絵本の原画制作に力を入れる。
○絵本作品に『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店)、『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)、『わかがえりのみず』(鈴木出版)、挿絵作品に『おしゃかさま物語』(佼成出版社)。『犬になった王子 チベットの民話』は、Internationale Jugendbibliothek München ミュンヘン国際児童図書館(ドイツ)の「The White Ravens 2014/ザ・ホワイト・レイブンス 国際推薦児童図書目録2014」に選定される。NHK日曜美術館の取材協力他、テレビ・新聞等への出演・掲載も多い。
○東京藝術大学・デザイン科非常勤講師。東京造形大学・絵本講師。金唐革紙保存会 主宰。日本児童出版美術家連盟(童美連)(太田大八先生、赤羽末吉先生、いわさきちひろ先生らが創設)会員・理事。絵本学会(太田大八先生らが創設、現会長:松本 猛先生)会員。日本中国文化交流協会(井上 靖先生らが創設)会員。この本だいすきの会(代表:小松崎 進先生)会員。千葉県松戸市在住。

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絵:後藤 仁 /文:君島 久子 /出版社:岩波書店絵本ナビ


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