2013-03-28
「金唐革紙(きんからかわし)」製作秘話 その2

「旧岩崎邸庭園 金唐革紙展 製作実演会」(2004年11月13日) 後藤 仁 ©GOTO JIN
〔後藤 仁の金唐革紙製作実績一覧〕
(%は、金唐革紙の研究所作業記録に基づいて、製作量・時間から割り出した、作業全体に対する貢献度。)
●1985年 旧日本郵船小樽支店 〔金唐革紙1種、数枚復元製作(1枚の大きさは約90×180cm)〕
後藤 仁は不参加。(後に、ここに使用された「金唐革紙」の製品製作をする。)
●1994年 旧林家住宅 〔金唐革紙1種、数枚復元製作〕
後藤 仁は不参加。(後に、ここに使用された「金唐革紙」の製品製作をする。)
●1995年 入船山記念館 〔金唐革紙4種、約150枚復元製作〕
製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に4名が製作に参加。
〔後藤 仁の製作実績〕
企画40%、版木修復100%、箔押し90%、打ち込み90%、やすり仕上げ100%、ワニス塗り90%、手彩色80%
●1999年 移情閣(孫文記念館) 〔金唐革紙1種、約400枚復元製作〕
製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に6名が製作に参加。
〔後藤 仁の製作実績〕
企画40%、版木修復100%、箔押し90%、打ち込み90%、ワニス塗り90%、手彩色70%、シルクスクリーン彩色80%、現地貼り込み80%
●2002年 旧岩崎邸(旧岩崎家住宅) 〔金唐革紙2種、約150枚復元製作〕
製作主任の後藤 仁を中心に製作された。その他、主に5名が製作に参加。
〔後藤 仁の製作実績〕
企画60%、版木修復100%、箔押し100%、打ち込み100%、ワニス塗り100%、手彩色30%、シルクスクリーン彩色100%
その他、「金唐革紙製品(金唐革紙見本帳、屏風・衝立・額製品等)」の製作、「金唐革紙展」の展示製品製作・会場設営・製作実演は、後藤 仁を中心に行われた。
現在までに、『金唐革紙』の最も多くの実質的製作にあたったのは後藤 仁(全復元製品の約85%の貢献度)で、他の者の50%以下の貢献度を大きくしのいでいる。したがって、『金唐革紙』の最も高度で完全な製作知識・技術を保有しているのは後藤 仁といえる。
〔金唐革紙の製作工程〕
1.「合紙」 手すき楮紙と三椏紙を合紙して、原紙を作成する。
2.「箔押し」 原紙に、金・銀・錫箔などの金属箔を押す。
3.「打ち込み」 文様が彫刻された版木(桜材)に、水で湿らせた原紙をあて、紙の裏より豚毛の強靭な刷毛で丹念に打ち込み、凹凸文様を出す。
4.「ワニス塗り」 錫箔の場合のみ、天然ワニスを塗って金色を出す。
5.「彩色」 漆・油絵具等で、丁寧に手塗り彩色をする。種類によってはシルクスクリーンで彩色したり、紙やすりでやすりがけをして古色をつける。
この製作技術は大変難しく長い経験を要する。現在は版木製作以外の全ての工程を同一人物が行うので、一日に刷毛で打ち込む事6時間以上という体力と、箔押し・精緻な彩色という、手先の器用さも必要となる。版木は明治・大正期に製作されたものを用いる場合が多いが、旧来の金唐革紙よりデザインをおこし新しく版木を製作する場合もある。
現在製作されてきた金唐革紙は全て旧製品のデザインによる「復元製品」で、新しいデザインによるオリジナル作品の製作は需要が無くて今まで行われていない。
ここまでは、「ウィキペディア」の『金唐革紙』に私の協力者が書き込んでくれたものと、だいたい同じです。次回からは、当事者しか知らないもっとくわしいエピソードなどを書いていこうと思いますので、お楽しみにしていて下さい。
絵師(日本画家・絵本画家、金唐革紙 製作技術保持者) 後藤 仁